商業登記電子証明書の使い方や取得方法とは?

申請までわかりやすく詳細に解説

2022/10/24

商業登記電子証明書は、署名用電子証明書の一種で、企業が発行する電磁的な書面に付与することで、書面の真正性担保が可能です。

電子証明書とは、認証局が発行する電磁的な証明書で、信頼できる第三者である認証局が、本人であると間違いなく証明するために発行するものです。マイナンバーカードにも電子証明書が利用されています。電子証明書には、署名用の電子証明書と、利用者であることを証明するための電子証明書があります。

署名用電子証明書は、インターネット上での電子文書作成や、送信する場合に使用するもの。作成した電子文書が真正であり、利用者が送信したものであると証明できます。利用者証明用電子証明書は、特定のウェブサイトやサービスにログインする際に利用できるものです。ログインする人が本人であると証明できます。

商業登記電子証明書の取得方法や、どのようなケースで活用できるのかなどを詳細に解説していきます。

目次

1.そもそも商業登記電子証明書とは

2.商業登記電子証明書の用途

3.取締役会議事録等の電子化促進で必要となる商業登記電子証明書

4.商業登記電子証明書の発行・取得方法

5.商業・法人登記のオンライン申請には取締役の電子署名も必要

6.まとめ

社内文書署名機能なら取締役会議事録など社内外の文書署名も電子化できる

1.そもそも商業登記電子証明書とは

商業登記電子証明書は、法務局が発行している企業に関する証明書です。申請の主体が該当の法人であることを証明します。

企業が役所に対し紙で手続きを行う場合は代表印と、代表印の真正性について証明する印鑑証明書を添付しますが、商業登記電子証明書はこれらに代わって申請における真正性を証明するためのものです。

企業が主体となって行う各種オンライン申請では申請時に利用する申請書に、電子署名とこの商業登記電子証明書を付与します。

オンライン申請において行える各種手続きについては、後述します。

参考・出典:電子証明書取得のご案内│法務省

2.商業登記電子証明書の用途

商業登記電子証明書の用途

商業登記電子証明書の用途にはどのようなものがあるのでしょうか?

①商業登記申請

新しく会社を立ち上げる場合や、役員の顔ぶれに変更があった際には商業登記が必要です。
商業登記の取り扱いは、法律によって定められているため、正確に手続きを行わなければなりません。

商業登記申請では、会社を立ち上げる際はもちろん、商号や資本金の金額など、会社にとって重要度の高い情報を法務局で登録します。

代表者・本社所在地・資本金・役員に関する情報などの登録された企業情報は、法務局が管理する商業登記簿に掲載され、企業に関する信用の維持管理につながります。これらは、閲覧申請を行えば、いつでも閲覧が可能です。

商業登記は、

  • 法務局に出向いて行う方法
  • 郵送で書面を送付し行う方法
  • オンラインで申請する方法

の3つにより行えます。

参考・出典:商業・法人登記申請手続│法務局

②納税

商業登記電子証明書は、法人税の電子申告にも利用できます。電子申告を行うことで、税務署に出向く手間や時間が省けます。e-Taxシステムで設定を行い、申告する際に電子証明をe-Taxの利用者識別番号に紐づけることで納税が可能です。

e-Taxの利用には、別途利用者識別番号が必要で、利用者識別番号はe-Taxのウェブページから取得できます。

参考・出典:e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーについて│国税庁

③社会保険・労務手続き

毎年申請が必要な社会保険・労務手続きも商業登記電子証明書を添付することでオンライン申請が可能です。

  • 雇用保険被保険者資格取得/喪失届
  • 健康保険
  • 厚生年金保険被保険者賞与支払届
  • 労働保険概算・増加概算
  • 確定保険料申告書
  • 雇用保険受給資格者氏名・住所変更届
  • 就業促進手当(就業手当)の申請
  • 雇用保険育児休業給付(育児休業給付金)の申請
  • 雇用保険介護休業給付(介護休業給付金)の申請

などが代表的な手続きです。

オンライン申請を行うメリットには、e-Govが提供するシステム上のチェック機能により記入ミスを防げるという点もあげられます。

参考・出典:雇用保険関係手続き電子申請のご案内│厚生労働省

3.取締役会議事録等の電子化促進で必要となる商業登記電子証明書

取締役会議事録等の電子化促進で必要となる、商業登記電子証明書

商業登記電子証明書は取締役会議事録等の電子化の際にも重要になります。このセクションでは、取締役会議事録について詳細をご紹介します。

①取締役会議事録等の電子化における背景

コロナ禍では、働き方が大きく変化しました。リモートワークが急速に普及し、書類に押印するためだけの出社が問題視されるなど、社会的な変化が起こったといえます。厚生労働省でもリモートワークの活用を奨励しており、相談窓口を設けています。

企業がリモートワークに対応するメリットとしては、

  • 感染リスクを抑えながら事業の継続が可能である
  • 従業員の通勤負担が減る
  • 採用におけるPRとなり、優秀な人材の確保に繋がる
  • 業務改善の機会となる

などがあげられます。

多くの会議と同じように取締役会についても、オンライン開催が一般化しつつあります。とはいうものの、取締役会議事録についてはいまだに紙で残し押印している場合も少なくありません。業務改善の余地は多くあるといえるでしょう。

参考・出典:テレワークを有効に活用しましょう│厚生労働省

②取締役会議事録の電子化に商業登記電子証明書が必要になる場合も

法務省は2020年5月に取締役会議事録の署名又は押印に代わる措置に関する、新しい見解を発表しました。

これは、民間事業者が提供する電子署名も会社法施行規則第225条の規定を満たし、取締役会議事録で利用可能と正式に認めたものです。この新見解により、取締役会ならびに取締役会議事録作成がオンラインで行いやすくなりました。

取締役会議事録を電子化するなかで、「オンライン登記申請を行う場合」は商業登記電子証明書が必要となります。

参考・出典:e-Gov法令検索会社法第二百二十五条│デジタル庁

4.商業登記電子証明書の発行・取得方法

商業登記電子証明書の発行・取得方法をご紹介します。

①商業登記電子証明書は法務局のみで発行できる

商業登記電子証明書は、法務局のみで発行が可能です。商業登記電子証明書の発行申請については、商業登記法第12条の2および、商業登記規則第33条の6によって定められています。

申請については、申請書を作成して代表者などの押印を行い、企業所在地を管轄する法務局ないしは地方法務局などの窓口に提出します。

オンラインで提出する場合には、「会社・法人の代表者」が必ず申請する必要があり、マイナンバーカードに記載がある住所と会社代表者の登記簿上の住所が一致していなければなりません。

引っ越しなどにより住所が食い違っている場合には、オンライン申請を行う前に会社の代表者について正しい住所を登記する必要があります。

参考・出典:電子証明書の発行申請│法務省
オンラインによる商業登記電子証明書の請求等について│法務省

②専用ソフトウェアのインストール

商業登記電子証明書の発行申請に必要な、商業登記電子認証ソフトの手順

商業登記電子証明書の発行申請を行う場合、まずは法務省が用意する「商業登記電子認証ソフト」をダウンロード・インストールする必要があります。 このソフトにより、申請書作成・電子署名付与・データ管理などを行えます。

参考・出典:「商業登記電子認証ソフト」のダウンロード│法務省

③申請用ファイルの作成

「申請用総合ソフト」をダウンロード・インストールしたら、電子証明書発行申請に必要なファイルを作成します。 この場合「鍵ペアファイル」「証明書発行申請ファイル」の2つを作成します。

専用ソフトウェア上で「鍵ペアファイル及び証明書発行申請ファイルの作成」を選択後、必要事項を入力すると作成されるため特別な操作などは不要です。

参考・出典:申請用総合ソフトでの申請・請求方法│法務省

④電子証明書の発行申請と取得

ファイルを作成し終えたら、オンラインで電子証明書の発行申請が行えます。書面で発行申請する場合には、最寄りの法務局/地方法務局窓口に赴いて申請が必要です。申請後は、登記供託オンライン申請システムより、電子証明書の取得に必要なシリアル番号が通知されます。

電子証明書をオンラインで取得するには、申請用総合ソフトを使用して電子認証登記所から電子証明書をダウンロードすることにより取得可能です。

参考・出典:電子証明書取得のご案内│法務省

5.商業・法人登記のオンライン申請には取締役の電子署名も必要

オンライン登記(支店の設置、本店所在地変更、代表取締役の選任等)の際にはそもそも前提として商業登記電子証明書が必要です。くわえて、オンライン登記の際に取締役会議事録を添付する際には、取締役全員の電子証明書を添付しなければなりません。

この時に使用できる商業電子証明書はこれまでは以下でした。

(1) 商業登記電子証明書(管轄の登記所、もしくはオンラインで申請して取得)
(2) 公的個人認証サービス電子証明書(マイナンバーカード等を利用して取得)
(3) 特定認証業務電子証明書(セコムパスポート)
(4) 官職証明書(政府や地方公共団体が発行)

今回の法務省の新見解によって民間事業者のサービスも使えるようになり、取締役会議事録の電子化がしやすくなりました。

参考・出典:オンラインによる商業登記電子証明書の請求等について│法務省

6.まとめ:新しい働き方に対応するため、社内文書の電子化を進めよう

近年の社会情勢の変化で、働き方は大きく変わりました。柔軟な働き方に対応するために、取締役会や各種手続きのオンライン化は進んでいくと考えられています。

社内文書の電子化を進め、新しい働き方に対応していきましょう。

社内文書署名機能なら取締役会議事録など社内外の文書署名も電子化できる

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