飲食店の倒産危機からV字回復!正確なデータに基づく『原価管理術』(Globridge)

2019/05/22 焼き鳥
国内外に68業態70店舗の直営店を運営する株式会社Globridgeは、5年ほど前は倒産の危機にあったといいます。創業11年で(2019年時点)、どん底からの復活を支えた「原価管理術」とは?インフォマートのセミナー「倒産危機からV字回復を実現」で特別公開したそのノウハウを、ご紹介します。

▶セミナーレポート「飲食店経営者向けセミナー 倒産危機からV字回復を実現」

急成長からの急転。 その時とった驚きの方法とは?

肉バル、海鮮居酒屋、クラフトビール店など多彩な68業態、直営70店舗を展開する株式会社Globridgeは、ほぼ別業態で運営し、創業から11年目で既存店過去最高売上を更新しています。

しかし、その歴史は順風満帆だったわけではありません。創業4年で直営85店舗というスピード出店を達成するものの、5年目には債務超過に陥りました。同社代表取締役社長の大塚誠氏が以下のように振り返りました。

「当時はもつブームで、もつ鍋屋の単一業態で85店舗を出店しました。ですが、ブームが去り集客は激減し、出店もストップすることとなりました。」

急成長からの暗転となり、ここから大塚氏は改革に乗り出し、一度は傾いた会社を見事にV字回復へと導いていくことになります。「私が行ったのは大きく2つ。ネットマーケティングと、現場スタッフに業態転換を任せることでした。特に、事業再生の原動力となったのは後者の方です。彼らが自ら考え、決定し、実行させることで現場力を最大化できました。単に『考えていい、決めていい』では、現場はなかなか動くことができません。そこで、飲食経営のロジックと数字を見る方法について徹底的に教えました。役割は、『店舗の利益を伸ばし続ける』、『アルバイトのメンバーを成長させる』など、彼らのミッションを明確にしました。その上で、権限を委譲したのです」これにより、3年間で現在(2019年時点)と同規模にまで業態が増え、既存店を過去最高の売上を達成するまでに復活することができました。

その間、現場ではトライ&エラーを繰り返しながら、「売上改善」と「原価率※改善」の2点を徹底して行いました。項目だけ見れば新しさはないものの、内容としては取り組みやすく、高い効果を得られることができました。

大切なのは、現場スタッフが自ら考え作り出した『生きた』方法だということです。ここからは、同社第二事業部長、竹内遼氏の話をもとに、「原価率改善」にしぼって具体的な方法をみていきます。

※原価率:売上げに対して原価が占める割合のこと。飲食店の場合、提供するメニューの原価額(材料費など)÷販売価格×100で算出すること。

メニューの出数ではなく、仕入れ額からの原価を改善する

竹内氏は、同社創業当時にアルバイトとして勤務し、大学卒業後に他業種へ就職しました。業績が急降下を始めたのは中途入社した2013年頃でした。現在は7業態8店舗を率い、エリアの平均月商6千万円を生む凄腕ぶりです。

竹内氏によると、原価率の改善には、正確なデータに基づくマネジメントが重要だといいます。

「原価管理には仕入れ商品ごとの購買データが必要です。弊社は食材の発注にインフォマートの『BtoBプラットフォーム受発注』を活用しており、その発注データを基幹システムと連携させています(図1)」
図1:Globridgeの日時損益管理
Globridgeの日時損益管理
まず、原価管理について語る際、おさえておきたい数式から(図2)。ご存知の通り、「原価率」とは、実際原価額を売上で割った値です。 ●図2 原価率・原価管理の考え方
・原価率=実際原価額÷売上
・実際の原価額=理論原価額+ロスの金額
・理論原価額=(食材単価×使用量)の総和
・ロスの金額=実際原価額-理論原価額
原価率・原価管理の考え方
まず、原価管理について語る際、おさえておきたい数式から(図2)。ご存知の通り、「原価率」とは、実際原価額を売上で割った値になります。

その「実際原価額」とは、予定通り食材を使用した場合の理論原価額にロスを加えたものになります。

「一般的に、原価率を下げるには、高い原価になっているメニューの数を減らし、低い原価のものを増やせばいいといわれます。ただし、これは理論原価が正しいことが大前提になります。」

「私が目を付けたのは、出数ではなく仕入れ額です。まず、『BtoBプラットフォーム受発注』の発注データをダウンロードし、発注額が高い食材から順に並べます。そのデータを元に、原価に対してその食材が占める『占有率』を出し、占有率の高い食材の値を下げるのです(図3)」
図3:食材別の発注金額
食材別の発注金額< 占有率の高いものから、商品を入れ替える、仕入れ先を見直す。スケールメリットを生かして交渉するなどを行い、この占有率を下げれば、原価率は下がることになる、というわけになります。ちなみに、弊社はデータ発注を行うことで、食材ごとの仕入れ額を計算する手間を一掃しています。

データから見えるロスの判別法とは?

竹内氏が見出したもう1つの原価率改善策は、「ロスの削減」です。再び図2を見ると、「ロス」とは実際の原価から理論原価を引いた差のことです。

「ロスは、歩留まりなど捨てている食材というイメージですが、実際にはオーバーポーションや、賄いで食べていた(笑)というケースでも発生します。ところが、そういったロスは現場にいないと見えてきません。そこで私は、データからロスを見つけ出して削減したのです」

竹内氏の方法も、実際の原価額と理論原価額の差からロスを算出するのだが、ここでもメニュー単位ではなく食材ベースで行っているところに特徴があります。

まず、Globridgeでは、使用食材や使用量など、メニューごとのレシピを『メニュー管理機能』に登録しています。そこに、『BtoBプラットフォーム 受発注』の仕入れデータを連携することで、「理論原価」が自動で算出されている(図4)。
図4:『BtoBプラットフォーム メニュー管理』を使った理論原価の管理方法
『BtoBプラットフォーム メニュー管理』を使った理論原価の管理方法 「POSデータを使ってメニューの出数を調べ、牛肉なら牛肉の理論原価を合算することで、食材ごとの『理論原価』が出ます。その値と、『BtoBプラットフォーム 受発注』で実際に発注した食材ごとの金額=『実際の原価』を比べると、違いが分かります。その違いこそ、食材ごとの『ロス』(図5)というわけです」 図5:実際の原価と理論原価の差
実際の原価額 理論原価額 ギャップ
まぐろ天身 121,871 112,775 9,096
サーモン 83,765 76,964 6,801
ボイルタコ 51,181 46,389 4,792
国産鳥ハツ 67,112 64,643 2,469
明太子チューブ 10,789 8,523 2,266
ロスの大きい食材が分かると、具体的にどのように対処すればよいか方法が見えてきます。

「食材ロスがわかったことで、要因を簡単に見つけられるようになりました。そして、例えばポーションが原因の場合は、現場にあらためて使用量を守るよう教育を徹底したり、肉のように歩留まりが問題の場合は、加工方法をあらためて教えたり、カットされている商品に入れ替えたりといった方法で対応し、ロスを削減しました」

頭を働かせる環境づくりが原価以上の付加価値を生む

このようにGlobridgeは「原価改善」以外も、データを活用して現場が抱える課題を見える化することに成功しました。そして、スタッフにも主体性をもって取り組むことで、現場力を最大限に発揮しました。そのことが利益率を押し上げ、V字回復という結果につながりました。

指揮をとった大塚氏は、最後にこのようなメッセージで締めくくりました。「飲食の世界で20年やってきて感じるのは、良いお店には頭を働かせるスタッフがいることです。そんなお店を作るために経営者がすべきことは、自らスタッフが考えて実行できる環境を作ることだと思います。つまり、正確なデータを示したうえで、ロジックを教えてあげる。そうすれば、きっと彼らは原価以上の付加価値を自ら生み出して、お客様に提供してくれることでしょう」

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