飲食店のための人手不足スパイラル脱却術(後編)~定着の決め手は教育・評価など4つのサイクル

2019/09/24
飲食店のための人手不足スパイラル脱却術(前編)では、求人・採用前にすべき組織改革を紹介した。後編では、人材が定着するための教育体制の仕組みづくりについて見ていこう。

材を定着させる4つのサイクル

グローイングサイクル
体系的な教育体制づくりにおいて基本となるのが、「グローイング・サイクル」だ。人材が辞めずに定着する組織として必要なアクションが、4つのステップに集約されている。

1.基準を示す
まず行うべきことは、「基準を示す」。組織に所属するさまざまな役割や立場の人たちに対し、経営者が求めていることは何かを提示する。つまり、その人にとってのゴールはどこかを、明確に示してあげることが大切だ。

2.教える
「教える」は、初期教育や研修、OJTなどを通じて、示したゴールに向かうために必要な知識やスキルを教える段階となる。ここで重要なのは、「成長意欲のない人はいない」という前提に立つことだ。一見モチベーションが低い人でも、潜在的な成長意欲を引き出してあげれば大きな戦力となることを忘れてはいけない。

3.要求する
教えて終わりではなく、教えたことをきちんと実践するように要求することも必要である。飲食店でよく聞かれる「レシピやマニュアルを用意して教えたのに、その通りにやってくれない」という悩みは、責任者が都度チェックしていないことが原因だ。この問題は、スタッフ本人ではなく組織にあると捉えることが大切である。

4.評価する
ゴールを示し、知識やスキルを教え、要求したことが行われているかどうかを検証する段階だ。ただし、検証だけで終わらず、その結果を客観的に評価し、良し悪しをフィードバックしてあげることが職場への定着に繋がる。評価については、次項でも詳しく解説しよう。

評価制度の目的は、査定ではなく育成

一連のサイクルの中で、「評価」は経営者とスタッフで最も認識が合わない項目である。事実、スタッフからは「評価制度はあるのにまったく機能していない」という声も多い。これは、評価の目的を経営者が単に給与査定のためと捉えているからだ。

しかし、このサイクルにおける「評価」の目的は、人材を成長させることにある。より明確にいうと、頑張りを認め、承認欲求を満たしてあげることで、辞めないアルバイトスタッフを育てることが目的なのだ。

たとえ、しっかり教育を行い実践させていたとしても、認められなければ人材は離れてゆく。成果をねぎらい、改善点とともに明確に伝えることが大切だ。

問題解消に欠かせない、積極的な外国人雇用

外国人労働者数の推移(万人)
前述した通り、日本人の働く人口は減少の一途で、この先も増える見込みはない。一方、日本で働く外国人は、右肩上がりに増えている。

厚生労働省によると、外国人雇用状況は2013年の72万人から2018年には146万人となり、5年で2倍に増えている。

今や、日本で枯渇状態にある労働力を補うには、外国人の採用が不可欠だ。しかも、相当なスピード感で積極的な外国人採用に舵を切るべき状況にあると言っていいだろう。
そんな中、急務となるのが外国人の受け入れ体制の確立だ。言語や文化、慣習の違いなどでクリアすべき課題は少なくない。日本人とは別のマニュアルを用意するなど、外国人向けの教育制度の整備が不可欠だ。そして何より大切なのは「この人たちとガッチリ組んで一緒にやっていく」という組織としての気概と覚悟である。

採用にあたっては、224ヶ国、10万人以上が登録している外国人専用求人サイト「YOLO JAPAN」など、専門のサービスを活用する手もある。5ヶ国語翻訳での情報発信、動画による応募者の日本語力の確認など、便利で役立つ機能があり、全登録企業のうち70%が飲食業界だ。

とはいえ、小規模の飲食店にとっては、外国人採用に不安やハードルの高さを感じることもあるだろう。そんな場合は、最初から大量に採用しようとせず、1人からスタートしてもいい。まずは目の届く範囲でしっかりサポートしよう。

軌道に乗れば、その1人が「この店は働きやすくて楽しい」というクチコミを外国人コミュニティに流し、人が集まることも多い。そこから、トレーナー的な存在を育成し、母国語でよりリアルなニュアンスを外国人スタッフに伝えてもらうという仕組みを作ることもできる。

飲食店の経営者として、理念の浸透は急務

これまで示した教育や評価制度、労務環境改善の結果が出ない場合はどうすべきか。その時は今一度、経営理念を現場に落とし込めているか見直しが必要だ。これは、経営者の思いを現場に押し付けることとは異なる。「美味しい」「笑顔」「清潔」といったワードは、どんな飲食店にも共通する理念だ。

しかし、ただ掲げただけで、スタッフが具体的なアクションをしていなければ、仕組みとして機能しない。経営理念に沿ったお店を作るためには、現場スタッフに理念を唱和させるだけでなく、どう行動するかを考えさせ、話してもらうことが不可欠だ。

また、今の若い人たちの価値観を理解することも大切である。経営者が起こしがちな間違いが、「仕事は目で盗むもの」「怒鳴られて覚えるもの」という妄想だ。そういう方法で自身が育った人もいるだろうが、今の若い人たちにはパワーハラスメントのある職場としてしか捉えられない。

人が定着する仕組みづくりは、既に取り組んでいる飲食店もあるだろう。ただ、自社内ですべてを構築することが難しい企業は、外部の専門機関に意見を聞くのもいいだろう。客観的で的確なアドバイスが得られるはずだ。いずれにせよ、改善に向けた早急な対策が必要なのは間違いない。

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