外食をするのは98%! 対策に役立つ食物アレルギーの人の外食事情

2014年11月06日
「食物アレルギー」に関する問題が急増していることから、TVやインターネット上でも多く取り上げられるようになりました。企業として食物アレルギー対策を立て、食の安心・安全な料理を提供するためにはどうしたらよいか見ていきます。食物アレルギーの子どもを持つ私、今村慎太郎が、アレルギーを対応する飲食業の安心と安全のための事業を行っているNPO法人アレルギーっこパパの会理事長として、企業の食物アレルギー対策に必要なポイントを解説します。

食物アレルギーの人が急増

急増している食物アレルギー事故は、マスコミに取り上げられる機会も増え、「食物アレルギー」の言葉を目にする機会が増えました。

では、どれほど食物アレルギーの人は実際に増えているのでしょうか?
全国の公立小中高生を対象に行った、平成25年度文部科学省委託事業「学校生活における健康管理に関する調査」によると、食物アレルギーを持つ小中高生の割合は2010年(2014年時点)に比べて1.4倍に増加しました。今や小中高生の約20人に1人が食物アレルギーを持つという状況になっています。また、口腔アレルギー症候群※1の成人が増えていることを背景に国民消費生活センターが「豆乳等によるアレルギーについて―花粉症の方はご注意を―」と注意しています。これにより、大人にも食物アレルギーの人が増えていることが伺えます。
※1:対象となる生の果物や野菜、大豆、豆乳などを食べた後、口の中、唇、喉などにかゆみや腫れ、痛みなどを感じる症状のことです。この症状は植物の花粉症と関連があるとみられています。

食物アレルギーに対応する制度がない飲食業

食物アレルギーに向けた取り組みは、国・地方公共団体などでは、「アレルギー疾患対策基本法」によりアレルギー対策が整備されています。学校給食においては自治体や学校が策定するガイドラインや管理指導表に基づく対応をしています。また、加工食品製造や販売業においては食物アレルギー物質の表示制度に沿った対応が進んでいます。 一方、飲食業は、食物アレルギーに関する制度やガイドラインがありません。基準となる制度やガイドラインがないため、現在は飲食店の自主的な取り組みに委ねられています。多くの取り組みは、加工食品製造・販売業におけるアレルギー物質の表示制度にならったアレルギー表示を行うケースが多いようです。しかし、製造から販売まで時間がかかる加工食品販売と異なり、その場対応が必要となる飲食店は、オペレーションとの兼ね合いなど、悩みどころも多いようです。

食物アレルギー98%でも外食しているという現状

企業が食物アレルギー対策として、押さえておくべきポイントは、食物アレルギーの人の外食をする際の行動です。当NPO法人がインターネットで行った調査「食物アレルギーの子どもの外食実態調査」をご紹介します。

この調査結果で明らかになったのは98%の家庭が外食を利用しているという結果でした。外食を利用する多い順並び替えると「ファミリーレストラン」「寿司」「うどん」「ファーストフード」と続きます。低アレルゲンのメニューを取り扱っているファミリーレストラン以外は、原材料がシンプルな料理を選んで外食をしているという結果でした。
利用する飲食店の種類はどれですか?

食物アレルギーでも98%が外食している

「食物アレルギーの子どもの外食実態調査」では外食で発症した経験と症状についてもアンケートを行っています。飲食業にお勤めの方には厳しい内容ですが、外食をしている98%のうち、58%が外食で発症ありとなりました。最も重い症状で、19%がアナフィラキシーショック※2という衝撃的な実態が明らかになりました。
※2:アナフィラキシーショックは、血圧の低下や意識障害などを引き起こし、命を脅かす最も危険な状態のこと。
最も重症だったときの症状はどの程度でしたか?

食物アレルギーを持つ人の3つの行動

なぜ発症してしまうのでしょうか。 この調査から、食物アレルギーを持つ人の3つの外食をする際の行動が見えてきます。

1.アレルギー表示がない飲食店で、推測で料理を選ぶ

アレルギー表示がない飲食店を利用する人は58%です。理由に「原材料表示がなくても、大丈夫そうな料理を自分で判断できるから」「過去、複数回利用して大丈夫だったから」といった声が多くありました。

2.アレルギー表示を事前に確認し、飲食店に食物アレルギーであることを伝えない

アレルギー表示を事前に確認しているため、飲食店に食物アレルギー情報を伝えないという人は56%を占めていました。食物アレルギーの人は飲食店のアレルギー表示で原材料情報を得ることができますが、調理中に意図せぬ混入物を避けるためには、調理に携わるスタッフが食物アレルギーの人がいることを認識する必要があります。しかし、食物アレルギーの人は食物アレルギーであることを伝えておらず、飲食店は食物アレルギーの人を認識できなくなります。つまり調理に配慮ができない状況となります。

3.よく利用する飲食店の場合、アレルギー表示を確認しない

初めて利用する飲食店の場合、約90%の人が原材料表示を確認するのに対し、過去に利用した飲食店では、確認する人は約40%です。頻繁に利用する飲食店の場合は約20%となりました。このように飲食店の利用回数が多くなるにつれ原材料表示を確認しなくなるという傾向があります。

これら3つの行動が現れる要因に、発症のリスクを初めから覚悟して外食をしていることが分かりました。企業側が食物アレルギー対策をするには、これらの食物アレルギー人がとる、行動があることを認識した上で、安心できる料理の提供をどう作り上げていけるかを考えることが大切になります。
協力:今村慎太郎 (NPO法人アレルギーっこパパの会 理事長)
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