取締役会議事録の役割や作成方法・注意点は?

電子化方法やひな形もご紹介

2022/10/24

取締役会議事録は、取締役会が行われた際に作成しなければならない議事録です。取締役会の頻度や回数は、企業によって違います。ですが、少なくとも3ヶ月に1回は行われることから、比較的頻繁に作成の必要がある社内文書だといえるでしょう。

打ち合わせ等で作成する通常の議事録と違い、会社の正式な文書として取り扱われます。監査の際などにも、企業の意思決定記録として提出が求められ、非常に重要な書類です。本記事では、取締役会議事録の役割や、作成方法、作成用の注意点やサンプルなど、網羅的にわかりやすく解説します。

目次

1.取締役会議事録とは

2.取締役会議事録は電子署名でも可能に

3.取締役会議事録が持つ役割

4.取締役会議事録の作成は義務?

5.取締役会議事録の作成主体と期限

6.取締役会議事録の作成方法

7.作成していない場合の罰則は?

8.取締役会議事録の保管

9.書面決議(みなし決議、決議省略)とその流れ

10.まとめ

社内文書署名機能なら取締役会議事録など社内外の文書署名も電子化できる

1.取締役会議事録とは

取締役会議事録とはどのようなものなのでしょうか。取締役会議事録の取り扱いは、会社法によって定められています。

①そもそも議事録とは

そもそも議事録とはなんでしょうか。議事録は様々な役割を担います。会議などの記録や、決定事項の共有が主な目的です。記載項目としては、日時・参加者・開催場所・会議の目的・議論すべき事項・参加者の発言内容などが挙げられます。

また誰がどんなアクションを行うのか、責任の所在を明確にする役割もあります。決定事項やスケジュールを関係各所に正しく伝える役割や、次のステップに対する合意形成の一助となるでしょう。

目的や重要性を理解して作成のコツを掴むことで、読み手にとってよりわかりやすい議事録に仕上がります。

議事録の内容が不十分だと、引継ぎの際などにわかりにくくなってしまうため、5W1Hを意識して必要な項目を網羅しましょう。
改行や箇条書きを意識し見やすくすることも、よい議事録作成のコツです。

②取締役会議事録とは

取締役会議事録とは、いったいどのようなものなのでしょうか?企業における取締役会は、会社法に定めのある公開会社に設置が義務付けられています。

公開会社は、株式に譲渡制限のない株式会社を指し、公開会社において取締役会を開催した場合、議事録を作成しなければなりません。取締役会議事録は、書面または電磁的記録で作成する必要があります。

通常の議事録も、参加者や閲覧者に齟齬がないように議論や決定内容を伝える役割があります。取締役会議事録も同様で、企業にとって重要な意思決定の記録のために、正確に作成しなければなりません。

③ステークホルダーにとっても重要な取締役会議事録

取締役会議事録は、株主などのステークホルダーにとっても重要な意味を持ちます。取締役会では、株主総会の招集・決算に関する事項・経営に関する事項などが議論されるからです。

取締役会議事録は、会社の意思決定を知る重要な資料です。会社法371条により、監査会社や株主も請求・閲覧が可能で、閲覧請求があった場合、特別の理由がない場合には、閲覧請求に応じなければなりません。

参考・出典:e-Gov法令検索会社法第三百七十一条│デジタル庁

2.取締役会議事録は電子署名でも可能に

取締役会議事録は電子署名でも可能

昨今の社会的情勢から、取締役会をオンラインで開催するケースも増えています。そうした状況も踏まえ、取締役会議事録の電子化もしやすくなりました。

①リモートワーク/ハイブリッドワークの浸透

新型コロナウィルス感染症の流行により、ワークスタイルは大きく変わりました。取締役会議事録を電磁的に作成・記録することも増えつつあります。通常業務はもちろん、取締役会もWeb会議などオンラインで開催されることが徐々に増えてきているからです。

②法的要件の緩和で電子署名の取得がしやすく

取締役会がオンラインで開催されることが増えていることを受けて、法務省民事局は新見解を示しました。新見解の内容は、取締役会議事録について、民間の電子契約事業者による電子署名でも有効性を認めるというものです。これにより一層、取締役会議事録の電子化がしやすくなりました。

3.取締役会議事録が持つ役割

取締役会議事録が持つ役割にはどのようなものがあるのでしょうか?改めて整理しましょう。

①合意形成の記録

正確な合意形成の記録は、取締役会議事録が持つ大きな役割の一つです。議事録に署名や押印、電子署名を行うことで正式な合意形成を行った記録となります。

②紛争の予防

取締役会議事録を正確に残すことで、取締役会における余計な紛争を回避することにも繋がるといえます。安定的な経営を行うための重要な役割です。

③承継対策

経営において、どのような意思決定がなされてきたかの経緯と決議結果は、後の重要な経営資料になります。

このような記録がなければ、相続や承継の際に効率的な引継ぎが行えなくなってしまいます。

4.取締役会議事録の作成は義務?

取締役会議事録の作成は義務なのでしょうか?取締役会を開催した場合には、議事録を必ず作成しなければならないと会社法369条により定められており、書面又は電磁的記録をもって作成します。また会社法371条により、取締役会から10年間の議事録保管義務があります。

5.取締役会議事録の作成主体と期限

取締役会議事録の作成主体と期限は定められているのでしょうか?

①取締役会議事録を作成すべきなのは誰か

取締役会議事録の作成を誰がすべきかについては、会社法において定められていません。 便宜上の作成者は、取締役会の代表である代表取締役とされることが一般的です。

②取締役会議事録作成の期限

作成の期限についても、別段の取り決めはありませんが、1~2週間をめどに作成されることが多いです。

6.取締役会議事録の作成方法

取締役会議事録の作成方法

取締役会議事録の作成で網羅しなくてはいけない事項には、何があるのでしょうか。

①取締役会議事録に記載するべき事項

・取締役会の日時・場所(その場にいない役員が出席した場合、その出席方法を含む)
まずは、取締役会の日時と場所の記載が必要です。取締役会が企業の会議室などで行われて、一部の役員のみオンラインで出席した場合にはその旨を記載しましょう。
・取締役会が特別取締役による取締役会であるときは、その旨
特別取締役に招集された取締役会であるときは、そのように記載します。
・取締役会が特別に招集されたものであるときは、その旨
取締役会が定例でなく、特別に招集された場合はそのように記載します。
・議事の経過の要領およびその結果
疑似に関する議論や結論が出るまでのプロセスを簡潔に記載します。
・決議が必要な事項において、特別の利害関係取締役がいるときは、該当取締役の氏名
決議に関して、利害関係が発生する取締役については、該当する取締役の氏名を記載しなければなりません。
・取締役以外が意見を述べたときは、その意見・発言の概要
取締役以外の参加者がおり、意見を述べた場合は発言者とその概要について記載します。
・取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人、および株主の氏名または名称 ・取締役会の議長がいるときは、その氏名
執行役・会計参与・会計監査人・株主が取締役会に出席した場合は氏名を記載します。また取締役会の議長の氏名も記載します。

②取締役会議事録における真正性の証明

取締役会議事録は会社法369条により、書面で作成される場合には署名または押印が必要です。 同様に電磁的記録にて作成する場合、電子署名をはじめとする署名または押印に相当する対応が必要であり、これにより真正性の証明となります。

③取締役会議事録のサンプル

取締役会議事録の記載サンプルを確認し、項目を確認していきましょう。

取締役会議事録のサンプル

電子議事録作成の場合には、末尾を「…電磁的記録により議事録を作成し出席取締役及び監査役は電子署名を行った。」といった記述に変更する必要があることに留意しましょう。

7.作成していない場合の罰則は?

取締役会議事録について、作成しない場合の罰則はあるのでしょうか?結論から言うと、罰則は会社法により定められています。

具体的には会社法976条によって、

  • 取締役会を開催したにも関わらず議事録を作成しなかった場合
  • 取締役会議事録に記載すべき項目が記載されていない場合
  • 虚偽の記録を行った場合
  • 正当な理由なく取締役会議事録の閲覧を拒んだ場合

などの場合に100万円以下の過料を科すとされています。

8.取締役会議事録の保管

取締役会議事録の保管は、取締役会の日からのち10年間と義務づけられています。保管場所は会社法371条により本店と定められており、監査で確認される場合もあることに留意しましょう。

9.書面決議(みなし決議、決議省略)とその流れ

書面決議(みなし決議、決議省略)とその流れ

書面決議(みなし決議、決議省略)とその流れを確認していきましょう。うまく書面決議を使えば、スピーディな意思決定に役立てられます。

①書面決議(みなし決議、決議省略)とは?

書面決議とは、決議事項について取締役全員により書面などによる同意を得られた場合、取締役会を開催せずとも、取締役会の決議があったものと同等とみなす会社法370条に定められた制度です。

いわゆるみなし決議、決議省略とされ、企業における迅速な意思決定が可能となります。
事前に定款にその旨を定める必要があることに留意が必要です。取締役全員の同意は電子メールによるものでも同意の意思表示と認められます。

また、取締役を開催しない場合のみなし決議の場合でも、電子署名が利用できます。

②書面決議の流れ

書面決議の流れはどのようなものなのでしょうか?具体的な書面決議の流れを確認していきましょう。

(1)議案の作成

まずは、決議が必要な議案を作成しておきます。日時や代表取締役の氏名など基本的な事項と、取締役に判断を仰ぎたい旨・さらに決議したい事項について、議案に記載します

(2)代表者名により議案における提案内容を取締役全員に送付

議案が作成できたら、議案における提案内容を代表者名により取締役全員に送付します。みなし決議には、「取締役全員」の同意が必要であるため送付漏れなどがないようにしましょう。

(3)取締役全員より書面・電磁的記録により同意を受ける

取締役全員より議案に同意を受けます。形式は書面や電磁的記録(電子メールなど)でも有効となります。この段階で、「取締役全員」が同意しなければ決議は行われません。

(4)決議の省略・みなし決議について取締役議事録を作成

取締役全員より同意を受けたら、決議の省略・みなし決議について取締役議事録を作成します。

(5)登記申請

登記申請が必要な取締役議事録を法務局に申請する段階です。前述のように、取締役会における書面決議(みなし決議)には、定款にその定めが必要です。そのため、取締役会議事録を登記申請する際には、議事録と合わせて定款も提出します。

(6)議事録・同意書(書面または電磁的記録)を保管

登記申請が無事に終了したら、議事録と各取締役の同意書を保管します。これらは企業の本店において、10年間の保管義務があります。

③書面決議の際の取締役会議事録記載事項

書面決議の際の取締役会議事録記載事項にはどのようなものがあるのでしょうか?会社法第101条により、書面決議の際の取締役会議事録記載事項が定められています。

  • 取締役会の決議があったとみなされた内容
  • 該当決議の提案をした取締役の氏名
  • 取締役会の決議があったとみなされた日時
  • 議事録を作成した取締役の氏名

上記について、抜け漏れなく記載するようにしましょう。

④書面決議の注意点

書面決議で注意するべき点もあります。具体的に確認していきましょう。

(1)定款に定めが必要

書面決議は、定款に定めがある場合しか行えません。取締役会議事録の登記申請の際にも、定款の提出が必要となります。

(2)取締役全員の同意が必要

また、あくまでも「取締役全員」からの同意が必要であることに留意しましょう。一人でも反対があれば可決はできないこととなります。ですが、決議について特別に利害関係がある取締役は決議に参加ができません。

(3)監査役が異議を唱えた場合には不成立

書面決議の可決には、監査役の同意は不要です。ですが、会社法第101条により、監査役が異議を唱えた場合には可決されないのでこの点には注意が必要です。

10.まとめ:働き方に合わせ取締役会議事録の作成・承認もリモートに。

取締役会議事録は企業運営において重要な意味をもつ議事録です。法律に則りきちんと運用していきましょう。またリモートワークやハイブリッドワークがあたり前になりつつ現在、取締役会議事録の運用も、リモート化が推奨されます。

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