結びの宿 愛隣館掲載日 2022年10月31日

毎月の経理作業が8時間から4時間に削減。
棚卸機能で在庫の集計作業も向上しました。

利用サービス 受発注(発注) | エリア 東北 | 
事業内容 温泉旅館「結びの宿 愛隣館」の運営 | 取材日 
結びの宿 愛隣館

宮沢賢治ゆかりの地、岩手県花巻市にある「結びの宿 愛隣館」は1960年創業の老舗旅館です。100の客室と3つの大浴場を抱えた館内には、混雑状況を測定するセンサーやチェックアウト時の自動精算機など、様々な場所にITが整備されています。

3代目社長の清水隆太郎氏は旅館業務のIT化を進め、2019年に『BtoBプラットフォーム 受発注』を導入。経理作業が8時間から4時間に短縮したほか、仕入れや棚卸作業も向上しました。

ココがPOINT!

地域の旅館業ではいち早くIT化に着手

―愛隣館の概要と清水社長の経歴を教えてください。

清水社長:花巻市の鉛温泉と新鉛温泉の間に、かつて県の宿泊保養所がありました。私の祖父がその施設長を務めていましたが、いまから60年ほど前に閉館されることになりました。そこで祖父は一念発起し、この地で温泉を掘って温泉旅館を開業したのです。

私は地元の高校から東京の大学に出た後、ホテル専門学校で1年学び、石川県和倉温泉の老舗旅館で2年間研修して戻ってきました。それが2000年頃のことになります。

代表取締役社長 清水 隆太郎 氏代表取締役社長
清水 隆太郎 氏

当時、当館を始め近隣の旅館ではインバウンドはほぼゼロでした。団体旅行も少子高齢化で減っていくのは目に見えていました。そこで、東北でいち早くネット予約に踏み切ったのです。

ネット予約を開始したのは良かったのですが、当時はまだリクエスト予約が一般的で、お客様からご予約のお申し込みをいただいても2~3日経ってからでないと部屋が確保できたか返信できませんでした。在庫数がアナログで管理されていたので、即予約完了にならなかったのです。

そこで公式ホームページとPMS(宿泊管理システム)と連動させ、すぐに予約管理できるようシステムを設計しました。それがわが社のIT化の始まりでした。その後はチェックアウト時の自動精算機や、タブレットや携帯端末を使ったオーダーシステム、フロントでタブレットによるチェックイン管理を始めるなど、お客様対応に繋がる業務の自動化を急ぎました。8年前に代替わりして私が社長になってからも、自動化・省力化による業務効率改善をテーマに、日々動いている状況です。

「結びの宿 愛隣館」外観

ペーパーレスと軽減税率対応で、仕入れ管理をIT化

―2019年に仕入れ管理をIT化されていますが、きっかけは何でしたか?

清水社長:いろいろな効率化を進めていくと、旅館業は旧態依然としていて、紙の伝票類ばかりだということに気づかされます。予約も売上も発注も経理も、すべて伝票に記入することから始まるわけです。

そのやりとりの過程で何度も「なんて書いてある?」とか「昨日の伝票はどこ行った?」とか「発注の日時を確認して!」などという場面があり、そのたびに伝票類の保管場所に走り、紙の束をめくって該当する伝票を探し出し、字が読めないからみんなで検討して…と、とにかく無駄が多かったのです。

それを当然と考えていましたが、この無駄を集約すると果たしてどれくらいの時間を浪費しているのかと思うようになりました。おそらく人生において、かなりの時間を無駄にしていると思いました。

そこでバックヤードのペーパーレスを進めていったのですが、決定的だったのが2019年10月に始まった軽減税率制度の対応でした。仕入れ品によって8%、10%と税率が変わりますが、各種紙伝票でどう処理すべきかが大きな悩みでした。ただでさえ伝票の集計に割く時間が長いのに、さらにこれを8%、10%と分けていくのは無理だろうと思ったのです。そこで軽減税率制度のスタートに合わせて、『BtoBプラットフォーム 受発注』の導入を決めました。

経理、用度、調理各部門で実感される効率性向上

―各現場での成果はどうだったのでしょう?

調理部長 袰岩 望 氏:私の前任者は、食材の発注はすべてFAXでした。エクセルで作成した仕入れ品の一覧表を印刷し、数量を書いて1枚ずつFAXし、相手先が話し中なら何度も繰り返し、仕入先から電話の確認に対応するなど、膨大な時間がかかっていたのです。

そういった事務作業とは別に当館はお客様ごとの部屋食、宴会場、レストランと3つのお食事プランあり、扱う食材の種類も膨大になります。エビひとつとっても、ブラックタイガーなのか車エビなのか、甘エビなのかという種類の問題から、冷凍か生食か、殻付きか剥きエビか、有頭か無頭か、サイズも異なります。さらに、献立のリニューアルが毎月ありますので、仕入れ品を特定するだけで一苦労でした。

今はタブレットから『BtoBプラットフォーム 受発注』を使って発注しており、履歴検索も簡単ですし、食材や棚・保管場所ごとのグループ設定も可能です。よく使う食材を一括登録できますし、メニューごとにまとめておけば、月一度の献立改変の際にも戸惑いがありません。

前任者がFAX発注に1~2時間かけていたものが、いまは15分もあれば発注作業が済んでしまいますので、便利に使わせてもらっています。

調理部長 袰岩 望 氏調理部長
袰岩 望 氏

「結びの宿 愛隣館」部屋食

仕入用度副部長 上田 禎行 氏:私は酒・飲料・食器・アメニティなど、食材以外のあらゆる備品を管理していますが、やはり問題は扱う品の種類が多いことです。なるべく発注品をまとめて、発注回数を少なくしたいとは思っていますが、物によっては新たな取引先を探すことも少なくありません。

そうした場合でも、システムを使えば仕入れ先の登録が素早くでき、膨大な発注履歴も残りますので、検索にも時間がかかりません。FAXのときに多かった、発注したのに仕入れ先では受けていないといったやりとりが皆無になりました。発注内容の変更もメールで送られますので、言った・言わないがなくなりました。それだけでも、時短は大幅に進んだと感じています。

何より『BtoBプラットフォーム 受発注』の棚卸機能には助けられています。これまでは数カ所に分かれた倉庫を行ったり来たりし、倉庫内でも棚ごとに確認し、紙に記入していかなくてはならなりませんでした。物品の管理状況次第で、伝票を綴じてある別のバインダーを取りに戻ることもあり、とにかく確認が大変でした。それがいまはその場で在庫を見て入力できますので、精神的なストレスは大幅に軽減されました。

仕入用度副部長 上田 禎行 氏仕入用度副部長
上田 禎行 氏

経理部長代理 兼 仕入用度 部長 畠山 美香 氏:経理部門はどこもそうだと思いますが、紙の伝票が社内で一番集まるところです。自動化できない細かい仕事はあっても、できるところをすべて自動化できれば、それだけ時短になり効率化も進みます。

食材にしても用度品にしても、仕入れの原価は日々変わりますので、各部署での仕入れの参考になるよう、本部で週に一度、社内宛てに原価一覧を発信しています。この作業はFAX用紙を引っ張り出して原価を集計して一覧にしますが、かつてはこの作業に30分以上かかっていました。

それがシステム導入後は、わずか1~2分で済んでしまいます。楽になったというより、これまでどれくらいの時間を無駄にしてきたかを考えると、恐ろしいとさえ感じました。

また経理部門では、発注書と納品書の単価や数量が合っているか内部チェックをしています。項目ごとに商品×数量を入力し、各項目の合計を縦の列で出す方式なので、社内では「タテヨコ計算」と言っていますが、この作業のために、毎月一度、納品伝票と請求伝票の突き合わせ確認を行っています。これに毎月8時間もの時間をかけていたのです。

BtoBプラットフォーム 受発注』導入後は、金額確認も自動で行われるので、棚卸機能の確定を待つだけで済みます。システムで受発注していない仕入れ品はありますので、作業自体は4時間ほどかかっていますが、それでも時間が半減したのは間違いありません。これは助かります。

経理部長代理 兼 仕入用度 部長 畠山 美香 氏経理部長代理 兼 仕入用度
部長 畠山 美香 氏

システム活用で時間を作り、新たな取り組み

―今後はどのような展望をお持ちですか?

清水社長:接客業ではこれからも人手不足の状況は続くと思っています。それでもやりがいは間違いなくあります。従業員により多くのやりがいを感じてもらうには、無駄な仕事を極力なくして、魅力的な職場を作っていくしかありません。

各所でIT化を進めることで、まだまだ効率化ができるはずです。これからの時代は何か大きな改造を施して一気に効率化を進めるのでなく、細分化されたそれぞれの業務の自動化を図り、連携させ、全体の効率化を果たすという形になると思います。その点でインフォマートのシステムは、横の連携を繋ぐ主要な役割を担っていると思っています。

いま250帖の大宴会場をリニューアルして、個人向けのレストランを2023年2月末にオープンできるよう進めています。“団体から個人へ”という視点で施設のハード面も変えていきます。それに対応できるようソフト面での柔軟性を、これからも期待したいと思っています。

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関連リンク

株式会社新鉛温泉

設立1960年11月
本社所在地岩手県花巻市鉛字西鉛23番地
代表者代表取締役社長 清水 隆太郎
事業内容温泉旅館「結びの宿 愛隣館」の運営
公式ホームページhttps://www.airinkan.com/
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