電子契約とは?

仕組みや手順、電子署名と電子サインの違いも解説

2021/09/30

電子契約はリモートワークの拡大や政府の後押しなどを背景に、近年急速に普及しつつある仕組みです。書面における契約締結よりも、大幅にコストや労力を削減できることから注目を集めています。

しかしながら電子契約の仕組みについてよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。本記事では電子契約の仕組みについて、図入りでわかりやすく解説していきます。

目次

1.電子契約とは

2.電子契約の基本的な仕組み

3.電子サイン、電子署名とは

4.タイムスタンプとは

5.電子証明書と電子認証局とは

6.電子契約における2つの種類

7.電子契約におけるリスク

8.電子契約に関する法律

9.電子契約導入の流れ

10.電子契約の利用の流れ

11.『BtoBプラットフォーム 契約書』なら安心安全

12.まとめ

図解!わかりにくい電子契約の仕組みを徹底解説

1.電子契約とは

電子契約とは、インターネット上で、PDFなどの電子文書を用いて契約を締結する仕組みです。

今までは契約締結おいては紙の書類と押印や署名が用いられてきました。電子契約は、押印の代わりに電子的な署名やタイムスタンプを使用します。郵送や製本といった手続きが簡略化されるため、契約書締結にかかる時間的なコスト削減、また紙の契約書で必要だった印紙も不要になり、印紙代の節約にもつながります。

締結した契約書のデータは、企業のファイルサーバーや各種クラウドストレージなどに保管されるのが一般的です。契約書は期限ごとに更新の必要があるものもあるため、電子化しデータベース上で管理することで、期限管理がしやすくなるといったメリットも。

電子契約に関する法令も整備され、働き方改革やコロナ禍の影響もあり、急速に普及しています。

2.電子契約の基本的な仕組み

電子契約はどのような仕組みで契約締結するのでしょうか? 基本的な仕組みを見ていきましょう。

①電子契約に必要な要素

電子署名、電子証明書、タイムスタンプを適切に組み合わせることにより本人証明、非改ざん性の証明、存在証明を実現できます。

これらの要素が揃うことで、契約が本人の意思であること、電子文書が改ざんされていないこと、遅くともタイムスタンプ記載の時点に電子文書が存在したことを証明でき、万一訴訟等に発展した際にも証拠力を保てるのです。

厳密にいうと電子契約はサービスによって仕組みがやや異なるため、毎月の契約締結数や、利用したい契約書の種類などによって選ぶべきサービスは異なります。

また、実際の運用プロセスが自社の規程に合っているかも重要なポイントです。権限設定など、自社のポリシーに則したガバナンスが可能かなどを踏まえて選ぶのがいいでしょう。

②電子署名を用いて電子契約が締結される流れ

電子契約を行う際には、甲と乙が電子的な契約書データをやり取りし、内容に合意します。
紙の契約書でいうところの押印署名に代わって、電子署名(暗号化等の処理)を行うことで締結が完了します。

電子署名の契約締結イメージ

電子署名は、第三者である認証局が発行する電子証明書によって、本人のものであることが証明されます。

もう少し掘り下げて解説すると、この電子署名の暗号化に使用されているのが「公開鍵暗号方式」という暗号技術です。ここではRSA暗号という公開鍵暗号方式に基づく方法について説明します。

甲または乙が、「秘密鍵」を用いて電子署名を契約書に添付し相手に送ります。秘密鍵は本人しか知り得ません。その際、それぞれの公開鍵が同時に送信されます。

電子証明書記載の相手の公開鍵によって復号でき、かつ認証局が発行する電子証明書によって公開鍵が本人のものであることが確認されれば、契約当事者による電子署名であると証明できるという仕組みです。

図解!わかりにくい電子契約の仕組みを徹底解説

3.電子サイン、電子署名とは

電子サイン、電子署名とは

電子サインと電子署名は何が違うのでしょうか? どちらも契約書に法的な効力をもたせることを目的とした仕組みです。

電子サインの定義はより広く、手書きのサインなども含むプロセス全体をさします。
店頭で買い物をし、クレジットカードで支払う際に、タッチペンを使用して電子端末にサインを行うことなどが該当します。

電子署名は、上述のとおり認証局による証明書の発行や、暗号化・復号プロセスを経るのが特徴です。そのため、より厳密に本人確認や非改ざん証明が可能であるといえるでしょう。

4.タイムスタンプとは

タイムスタンプは、電子文書の存在と改ざんされていないことを、時刻とともに証明するものです。 この時刻は時刻認証局という機関のものを使います。なぜなら、パソコンの時刻は容易に変更ができてしまうからです。

まず、電子文書の作成者側で、契約書などの電子文書データをもとにしたハッシュ値というものを計算。この計算においてはハッシュ関数と呼ばれる手法を用いて行います。ハッシュ値はもとになるデータが同じであれば必ず同じになるという特徴があります。これは上述の電子署名の暗号化において使用されている仕組みの一つです。

タイムスタンプの仕組みのイメージ図

元データからハッシュ値を計算するのは容易ですが、ハッシュ値をもとにして、そのハッシュ値を出力するようなデータを生成することはできませんので、同じハッシュ値を出力するような他の電子文書を作成することはできず、安全性が担保されます。

ハッシュ値にタイムスタンプを付与することで、電子文書データがその時間に存在していたことが証明でき、もとの文書とハッシュ値が同じであることで、改ざんされていないことが証明できます。

電子データは日時の改ざんなどができてしまうため、タイムスタンプは重要な要素です。また電子帳簿保存法においてはタイムスタンプ付与が義務化されています。

5.電子証明書と電子認証局とは

電子証明書とは、第三者機関である認証局によって発行され、電子署名で使用される公開鍵が当事者のものであることを証明するためのものです。

電子認証局のイメージ図

紙の契約書における印鑑証明書と同等の役割を果たすと考えればわかりやすいでしょう。

電子認証局は契約の当事者に含まれない第三者であり、電子証明書を発行する機関です。公的機関ではなく、民間企業においても電子証明書を発行可能となっており、電子契約サービスを提供するベンダーが認証局を運営していることもあります。

第三者を介して証明書を取得することで、なりすましや改ざんなどについて防ぐ役割を果たします。

6.電子契約における2つの種類

電子契約には、2つの方式があります。それぞれどのような特徴があるか見ていきましょう。

①当事者型

当事者型の電子契約は、当事者名義の電子証明書を用いて行われます。また、契約書内における甲乙それぞれが電子証明書を取得する必要もあることを頭に入れておくとよいでしょう。

ただし、電子証明書の本人確認プロセスについては、電話やメールのみの場合もあります。窓口での銀行口座開設のように、顔写真付き身分証明書で厳密に本人であることを確認するものではないケースも。

電子証明書発行の際における本人確認プロセスを理解した上で、電子契約を利用する必要がある、ということには留意しておきましょう。

②立会人型

立会人型の電子契約の特徴は、電子署名を電子契約サービス提供事業者が行うことです。サービス提供事業者は、利用者の指示によって電子署名を契約書に付与します。取引先などステークホルダーである契約書の受け取り手が同様のサービスに加入していなくても利用が可能です。

また第三者機関である電子認証局による本人確認は行われず、メールアドレス等による本人確認であることが一般的です。

立会人型の電子契約は利便性が高いという特徴をもちますが、訴訟になってしまった場合の証拠性などは、当事者型にくらべてやや難しくなる場合もあります。

7.電子契約におけるリスク

電子契約におけるリスク

印紙代や郵送代をはじめコスト削減などのメリットの多い電子契約ですが、リスクがゼロというわけではありません。電子契約におけるリスクを確認、把握した上で賢く利用しましょう。代表的な電子契約におけるリスクを紹介していきます。

①情報セキュリティリスク

電子契約締結の際には、契約締結相手とインターネットやメールを使ってコミュニケーションする場合がほとんどです。そのため、一般的なリスクとしてはハッキングやマルウェア感染などによる情報漏えいリスクがあげられます。

メールの誤送信や、巧妙ななりすましメールなどに対処するためのセキュリティ対策は必須だといえるでしょう。

また、電子データはコピーや持ち出しが容易であるという特徴があります。情報漏えいを防ぐために、閲覧権限などの設定や操作ログの管理を行うことも有効な対策です。なお、対象となる文書によっては、電子契約サービスベンダーのサーバーの所在(国内なのか、海外なのか)も考慮するとよいでしょう。

②契約プロセスにおけるリスク

電子契約におけるリスクとしては、なりすましや改ざんのリスクがあります。

電子サイン/電子署名、電子証明書、タイムスタンプすべてを揃えていれば限りなくなりすましや改ざんのリスクを下げられますが、その可能性がゼロではない点について理解しておくことが大切です。

また、一部の契約書では紙の契約書交付が義務付けられていることも留意しましょう。

ただし紙の契約書交付義務については、2021年の法改正で大幅に緩和されるので、常に最新の情報を確認しましょう。

8.電子契約に関する法律

電子契約に関する法律にはどのようなものがあるのでしょうか? 電子契約にかかわる法律について、基本を理解しておきましょう。

①電子署名法

電子契約で重要になるのが電子署名法です。電子署名法第3条では、本人の電子署名が付与された電子データであれば、真正な成立が推定されるとしています。

一部例外もありますが、2021年5月の法改正によって、多くの契約が電子化可能や、押印不要になります。たとえばこれまで書面交付が必要だった「宅地建物の売買契約に係る重要事項説明書」なども電子化されます。ただし多くの改正は2021年9月1日施行ですが、同項目については「公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日」に施行される見通しですので、注意が必要です。

今後、ますます契約書の電子化が進むと予測されます。また、電子契約サービスによっては、グレーゾーン解消制度を使って、業法等が定めている要件への適合性を確認しているケースもあります。企業間の契約において、電子署名法に準拠することは必須といえるでしょう。

なお、これまでは、立会人型署名の場合に、これが利用者の電子署名といえるのか、電子署名法3条の電子署名に適合するのかが不確かでした。なお、これまでは、立会人型署名の場合に、これが利用者の電子署名といえるのか、電子署名法3条の電子署名に適合するのかが不確かでした。

ですが、2020年の総務省・法務省・経済産業省発行のQ&Aで、電子署名において「技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみにもとづいて機械的に暗号化されたものであること」であれば、利用者の電子署名とみなしうる旨及び電子署名法3条の推定を受け得る旨の見解が示されています。

②電子帳簿保存法

電子帳簿保存法は電子文書の保存要件について定めた法律です。対象文書によって3つの区分があり「区分1:電子帳簿書類の保存」「区分2:スキャナ保存」「区分3:電子取引」となっています。

電子契約は「区分3:電子取引」に該当します。電子契約のデータを紙に出力して保存することも認められていましたが、2024年1月1日以降は認められなくなる(※)ため、電子帳簿保存法の保存要件を満たす必要があります。
※2021年12月10日に公表された令和4年度 与党税制改正大綱により、2022年1月1日から2023年12月31日までの間に申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税者において「やむを得ない事情がある」と認められる場合には電子取引情報の書面出力・保存が認められることになりました。

「区分3:電子取引」の保存要件(2022年1月1日以降のもの)は下記のとおりです。

真実性の要件 取引の授受に関する要件
以下の措置のいずれかを行うこと
①タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
②取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すとともに、保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておく
記事事項の訂正・削除に関する要件
以下の措置のいずれかを行うこと
①記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行う
②正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、その規程に沿った運用を行う
可視性の要件 保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
次の各要件を満たす検索機能を確保すること
①取引年月日、取引金額、取引先により検索できること
②日付又は金額の範囲指定により検索できること
③二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること
ただし、ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には②③は不要。小規模事業者でダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には①~③のすべてが不要

出典・引用:電子帳簿保存法が改正されました|国税庁

参照:令和4年度税制改正大綱

関連リンク:電子契約法律ガイド

9.電子契約導入の流れ

電子契約導入の流れ

実際に電子契約システムを導入する場合には、どのようなステップが必要なのでしょうか? ひとつずつ見ていきましょう。

・現状の契約関連業務を整理する
まずは、現状の契約に関わる業務やプロセスを見える化して整理していきます。この段階では、ダブりや漏れがないことを意識して業務フローを洗い出していきましょう。

・導入の目的、目標、導入範囲の整理・選定
次に、導入の目的を整理していきます。どの業務をどれくらい改善するか、目標とする数値や工数を定めて、導入範囲を決めていく段階です。

・電子化する契約書の種別を選定する
電子化する契約書の種別を決めていきましょう。収入印紙が必要なものは費用対効果を算出しやすくなります。

・電子契約サービスを比較する
電子契約サービスを比較するために、各社の特徴や費用、提供しているサービスの仕組みやその法的効力の高さなどを慎重に比べていく必要があります。電子契約は関係者も多くなるため、スムーズに導入を進めるために導入前後におけるサポートの充実度なども確認しておきましょう。

・社内起案と稟議
導入するサービスを選定したら、社内起案と稟議申請を行います。サービスによっては、稟議申請プロセスも支援してくれるタイプのものもあります。

・システム運用ルールの整備と社内周知
稟議が通り、導入が決定したら、社内における運用ルールを整備します。文書管理規程や印章管理規程などが代表例です。わかりやすい資料やマニュアルも準備しておきましょう。資料が用意できたら、社内周知のために説明会などの機会を設けます。

・関係部署への周知
契約に頻繁にかかわるような関係部署へは、別途資料を作成するなど、とくに念入りに周知する機会を設けるようにしましょう。

・取引先への周知
運用を開始するまでに、メールなどで取引先への周知や電子契約への移行のお願いを行います。その際、取引先における導入メリットも訴求するとよいでしょう。

・運用開始
社内外への周知が終われば、実際に運用を開始していきます。安定的に運用できるまでは、こまめに問い合わせに対応しトラブルシューティングをしましょう。

電子契約をスムーズに導入するための7ステップ

10.電子契約の利用の流れ

電子契約導入後における実際の利用の流れは以下のようになります。

・社内ガイドライン・マニュアルの作成
電子契約の利用にあたり、社内における権限区分やガイドラインについて示した資料を作成しましょう。また現場で契約締結に必要な手続きをするために、導入するシステムに応じたマニュアルも必要です。

・電子契約用の雛形作成
電子契約で使う、契約書のひな形を作成します。このステップでは事業部門と法務部との連携が欠かせません。

・社内規程の整備
ガイドライン策定につながる点もありますが、ワークフローなど、電子契約において変えるべき、あるいは新たに策定すべき社内規程を整備していきます。

・利用開始
いよいよ利用開始となります。想定していなかった問い合わせなども発生するため、管轄部署を明確にしておき柔軟に対応しましょう。

11.『BtoBプラットフォーム 契約書』なら安心安全

「BtoBプラットフォーム 契約書」では、運営会社であるインフォマートが認証局も兼ねています。インフォマートの認証局では、電子署名法の基準にそった電子証明書を発行しています。タイムスタンプの付与もできるため、非改ざん性や存在証明をきちんと担保した契約締結が可能です。

また電子帳票保存法の要件を導入企業と取引先側の両面にて満たしているため、利用にあたり取引先も事前に税務署への申告は不要です。

システムにブロックチェーンを使用していることから、より安全に利用できます。

①ブロックチェーンの仕組み

ブロックチェーンは、複数のコンピューターをつなげた分散型ネットワークと暗号を用いた仕組みです。一定期間、一定量のデータをブロックとしてまとめ、複数のコンピューターやサーバーで検証しブロックをつなぐ仕組みからブロックチェーンと呼ばれています。

一つのサーバーのみ用いる中央集権的管理を行わないため、改ざんについて極めて困難な技術であることが特徴のひとつです。仮想通貨ビットコインに使用された技術として注目を集め、産業用途への応用が期待されています。

ブロックチェーンは分散型の仕組みを採用しているため、非改ざん性をより強化できるという特徴があります。このことから、電子契約システムにおいても、ブロックチェーンを採用することで契約書の真正性を強化できます。

12.まとめ

本記事では電子契約における要素や、主な仕組みを紹介してきました。電子契約によってコストや労力を大幅に節約できます。また法的な根拠や仕組みを深く理解することで、社員や取引先も安心して利用できます。

ビジネスの根幹を支える契約について理解し、効率的な業務のため、ぜひ電子契約を利用してみてください。

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