無料オンライン相談

インボイスは電子帳簿保存法に則って保存すべき?保存方法を解説

2023年10月からインボイス制度が始まり、インボイス(適格請求書)を使った取引が開始しました。 インボイスは、国税関係帳簿や書類を電子データとして保存する際の要件を定めた電子帳簿保存法の対象である取引関係書類に該当します。そのため、インボイスを電子データで保存したい場合、電子帳簿保存法の要件を満たす形で保存しなければなりません。 そこで今回は、インボイス制度と電子帳簿保存法の関係性や、インボイス制度と電子帳簿保存法の概要のほか、電子帳簿保存法に則ったインボイスの保存方法などについて解説します。

インボイスは電子帳簿保存法に則って保存すべき?保存方法を解説

最終更新日:2024年8月6日

目次

インボイス制度と電子帳簿保存法の関係性

インボイス制度と電子帳簿保存法は、どちらも取引関係書類を対象とした法制度です。

インボイス制度とは、2023年10月からスタートした消費税の仕入税額控除に関する制度のこと。インボイス制度の導入後は、インボイスの要件を満たす請求書等がなければ消費税の仕入税額控除が原則認められなくなりました。
 
一方の電子帳簿保存法は、取引関係書類・決算関係書類といった国税関係書類のほか、仕訳帳や決算関係帳簿といった国税関係帳簿を電子データで保存する際の要件を定めた法律です。2022年1月に改正が行われ、2024年1月からこれまで任意だった「電子取引」への対応が原則として義務化されています。
 
インボイス制度と電子帳簿保存法は、それぞれ異なる制度や法律です。しかし、インボイス制度に則って発行されるインボイスは、電子帳簿保存法の対象である「取引関係書類」にも該当します。

そのため、インボイスをデータで保存する場合は、電子帳簿保存法の要件を守らなければなりません。特に、2024年から義務化された「電子取引」に該当する書類については注意が必要です。

 

複数の消費税率に正しく対応するために設けられたインボイス制度

インボイス制度は、複数の消費税率に正しく対応するために設けられた制度です。従来、消費税の課税事業者は、課税売上高にかかる消費税額から課税仕入高にかかる消費税額を差し引いて消費税の納税を行っていました。しかし、インボイス制度導入後は、一定の要件を満たすインボイスがある場合にのみ、原則として課税仕入高にかかる消費税の控除が認められます。
 
一方、免税事業者はこれまでどおり納税義務の免除が可能です。ただし、顧客が課税事業者で本則課税の場合、免税事業者がインボイスを発行できないと仕入税額控除ができないため、顧客に損失を与えかねません。
 
すると、顧客側より損失分を値引きされたり、今後の取引の継続が難しくなったりと、収入にも関わってくる可能性があります。免税事業者がインボイスを発行するためには適格請求書発行事業者になり、課税事業者として消費税を納税しなければいけません。
 
なお、インボイスにはフォーマットはありませんが、記載しなければならない項目が決まっています。記載する項目は下記のとおりです。
 
<インボイスに記載しなければいけない項目>
・発行事業者の氏名または名称および登録番号
・取引年月日
・取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
・税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)および適用税率
・税率ごとに区分した消費税額等
・書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
 
※インボイス制度の詳細については「インボイス制度とは?適格請求書等保存方式の導入による経理業務への影響と対応方法」をご覧ください。

 

インボイス制度に対応する際の3つのポイント

すでに適格請求書発行事業者として登録している方はもちろん、現在登録を検討している方は、制度の内容を正しく理解した上で対応する必要があります。インボイス制度に対応する際には、下記の3つのポイントを押さえておきましょう。

インボイスを発行するためには適格請求書発行事業者の登録が必要

インボイスを発行できるのは、適格請求書発行事業者のみです。インボイス制度に対応するかどうかは任意で選択できますが、対応するのであれば適格請求書発行事業者への登録が必要です。
 
適格請求書発行事業者に登録する場合は、登録申請書と本人確認書類を管轄の税務署に直接持ち込むか、管轄地域内の「インボイス登録センター」に郵送で提出します。また、パソコンやスマートフォンから申請する場合は、e-Taxを通して申請するようにしましょう。
 
なお、適格請求書発行事業者は課税事業者となるため、免税事業者が登録する場合、登録後に消費税の確定申告と納税が必要になる点に留意してください。
 
※インボイス制度の登録申請方法の詳細については「インボイス制度の登録申請はどう行う?必要書類や手順を解説」をご覧ください。

仕入税額控除をするには、要件を満たすインボイスの作成が必要

消費税の課税事業者のうち、年間の課税売上が1,000万円を超える本則課税事業者は、課税売上高にかかる消費税額から課税仕入高にかかる消費税額を控除して消費税を納税します。これを仕入税額控除といいます。
 
ただし、インボイス制度導入後は、原則としてインボイスがないと仕入税額控除を受けられません。そのため、免税事業者が発行した請求書は仕入税額控除の対象にならないということです。
 
なお、インボイス制度には経過措置が設けられています。仕入税額控除の計算方法もさまざまなため、免税事業者は経過措置を理解した上で、適格請求書発行事業者に登録するかを検討してください。
 
※インボイス制度の登録申請方法の詳細については「インボイス制度の経過措置とは?猶予期間と仕入税額控除について解説」をご覧ください。

やりとりしたインボイスは7年間の保管が必要

インボイスは、発行した側も受領した側も、所得税や法人税の申告期限から7年間保管しなければいけません。なお、免税事業者の個人事業主がインボイスの要件を満たす請求書や領収書等を受け取った場合は、この限りではありません。
 
紙のインボイスを7年間保管する場所を確保するのは大変です。そのため、電子データでのインボイスのやりとりが主流になることも考えられます。また、紙で受け取ったインボイスをデータ化して保管することも想定されます。
 
紙のインボイスをデータ保存したい場合や、データでやりとりしたインボイスをデータ保存したい場合には、電子帳簿保存法に則って保存する必要があるでしょう。

 

国税関係帳簿や書類を電子データ保存する要件を定めた電子帳簿保存法

電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿や書類を電子データとして保存する際の要件を定めた法律です。保存後の電子データの取扱方法についても定められています。
 
電子帳簿保存法は、国税関係帳簿や書類を電子保存するすべての事業者を対象とした法律で、企業の規模や法人か個人事業主かに関わらず対応しなければなりません。

電子帳簿保存法の3つの区分と要件

電子帳簿保存法は、対象となる書類の種類に応じて、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つの区分が設けられており、それぞれ保存要件が異なります。3つの区分は下記のとおりです。
 
・電子帳簿等保存
電子帳簿等保存は、会計ソフトや請求書発行システムなどを使用し、一貫して自社のパソコンなどで作成した国税関係帳簿や国税関係書類について、電子データのまま保存する場合の区分です。対応は任意です。
 
・スキャナ保存
スキャナ保存は、紙で受け取った取引関係書類や、自社が紙で作成した取引関係書類の控えをスキャンしてデータで保存する場合の区分です。こちらも対応は任意になります。
 
・電子取引
電子取引は、メール添付やクラウド上でデータとしてやりとりした取引関係書類と控えを、データのまま保存する場合の区分です。電子取引は、2024年1月の法改正で対応が原則として義務化されました。
また、電子取引のデータを保存する際は、下記の「真実性の確保」と「可視性の確保」の要件を満たす必要があります。
 
電子取引の保存要件



ただし、電子取引への即時対応が難しい事業者に対しては猶予措置が設けられています。猶予措置について詳しくは後述します。
 
※電子帳簿保存法の詳細については「電子帳簿保存法とは?対象書類と保存要件や期間をわかりやすく解説」をご覧ください。

 

電子帳簿保存法に対応する際のポイント

国税関係帳簿や書類を電子データとして保存する際に適用される電子帳簿保存法ですが、対応する際にはどのようなことに気をつければいいのでしょうか。電子帳簿保存法に対応する際には、下記の2つのポイントに留意してください。

電子取引したデータは電子データのままの保存が必要

メールやクラウド上で電子データとしてやりとりした取引関係書類は、データのまま保存することが義務付けられています。データ保存する際は、電子帳簿保存法の要件を満たす形で保存しましょう。

電子帳簿保存法の要件を満たす保存が必要

電子帳簿保存法の対象となる取引関係書類を電子保存する場合は、電子帳簿保存法が定めた保存要件を満たさなければいけません。満たすべき要件は、それぞれの事業者の規模などに応じて異なります。国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトなどを確認して保存要件を理解しましょう。
 
※電子帳簿保存法の保存要件の詳細については「電子帳簿保存法とは?対象書類と保存要件や期間をわかりやすく解説」をご覧ください。

 

電子帳簿保存法の猶予措置

2024年1月の電子帳簿保存法改正によって、電子取引書類のデータ保存が原則として義務化されました。2023年12月31日までは、対応するのが難しい事業者に対して紙で保存することを認める宥恕措置が設けられていましたが、2024年1月1日以降は義務化されています。
 
ただし、新たな猶予措置として、下記をすべて満たす事業者に対して、電子帳簿保存法が定める要件を満たさない形でデータを保存することが認められています。
 
<電子帳簿保存法の猶予措置の要件>
・要件に沿って電子取引データの保存をするのが難しいと所轄の税務署長が認める(事前申請不要)
・税務調査などの際に、電子取引データのダウンロードの求めに応じられるようにしておく
・税務調査などの際に、電子取引データを紙に印刷した書面の提示・提出に応じられるようにしておく
 
なお、上記のほか、税務調査などの際にデータのダウンロードの求めに応じられるようにしてある事業者で、なおかつ前々年の売上高が5,000万円以下の事業者、または電子取引データを印刷した書面の提示・提出に応じられる事業者は、検索要件を満たす必要がないという措置も設けられています。
 
※電子帳簿保存法の猶予措置の詳細については「電子帳簿保存法におけるデータ保存はいつから?猶予措置とともに解説」をご覧ください。

 

電子帳簿保存法に則ったインボイスの保存方法

インボイス制度には、インボイスの保存形式に関する規程がありません。インボイス制度だけを考えるのであれば、保存形式は紙でもデータでも問題ないということになります。
 
しかし、インボイスとしてやりとりされる取引関係書類は、電子帳簿保存法の対象でもあります。複数の法律の対象となる書類は、両方の法律を守る形で処理しなければいけません。インボイスの保存方法も、電子帳簿保存法に則った対応が必須です。
 
なお、インボイス制度への対応は任意のため、適格請求書発行事業者以外は対応する必要がありません。しかし、電子帳簿保存法は一部が義務化されており、すべての事業者が対象です。

電子取引したインボイスの保存方法

インボイスをメールやクラウド上で電子取引した場合は、電子データとして保存しなければなりません。電子帳簿保存法が定める保存区分である「電子取引」にあたるからです。
 
電子取引とは、メールやクラウド上でやりとりした電子データをデータのまま保存しなければならない保存区分です。具体的には、下記のようなものが電子取引の対象として挙げられます。



これらのデータは、受け取った側も送信した側も、どちらも電子データとして保存する義務があります。さらに、保存の際には原則として、「真実性の確保」と「可視性の確保」の要件を満たさなければいけません。
 
※データ保存の詳細については「電子帳簿保存法における保存期間は?紙・電子データの保存方法も解説」をご覧ください。

紙で取引したインボイスの保存方法

紙でやりとりしたインボイスは、紙のまま保存してもデータ化して保存しても構いません。インボイスを紙で受け取った場合は、下記のような方法で保存できます。
 


もし、データ化して保存する場合は、電子帳簿保存法上の「スキャナ保存」の区分に該当します。スキャナ保存の対応は任意ですが、データ化して保存するのであれば、スキャナ保存の要件を守らなければならないため注意しましょう。例えば、スキャナ保存制度の要件に沿わない形でデータ保存し、紙の書類も破棄した場合は、電子帳簿保存法の違反になります。
 
※スキャナ保存の詳細については「スキャナ保存制度とは?電子帳簿保存法での要件や注意点を解説」をご覧ください。


 

インボイス制度と電子帳簿保存法の対応を同時に進めたほうが良い理由

一見、関係のないように見えるインボイス制度と電子帳簿保存法ですが、事業者が対応する際には同時に進めるのが効率的だといわれています。
 
ここでは、インボイス制度と電子帳簿保存法の対応を同時に進めたほうが良い理由について解説します。

システム変更を一括で行えるため

インボイス制度と電子帳簿保存法は、どちらも請求書や領収書といった取引関係書類に関する法制度です。そのため、導入するシステムも両者に対応したものが多くなっています。それぞれへの対応を個別に考えるのではなく、両方に対応できるシステムを選定したり、連携をとりやすいシステムを選んだりすることで、システム変更の手間を最小限に抑えられるでしょう。

業務効率化が可能なため

インボイス制度と電子帳簿保存法の両方に対応できるシステムを導入すれば、業務効率化につながります。
 
インボイスに必須の記載項目を満たした取引関係書類の発行や、受領したインボイスの記載項目のチェックなどには、多くの手間がかかるでしょう。すべてを手作業で行っていると、ヒューマンエラーが起こるおそれもあります。
 
また、取引関係書類を電子データとして保存する場合には、電子帳簿保存法の保存要件を満たさなければいけません。こうした問題をシステム的に解決することで、担当者の負担軽減と業務効率化が可能となります。

関連性のある2つの法制度に対して別々に対応するのは手間がかかるため

前述のとおり、インボイスと電子帳簿保存法は対象となる書類の範囲が重なっています。個別に対応するよりも、最初からまとめて対応を進めていったほうが効率的です。
 
それぞれの制度の要件を確認し、自社の対応範囲などを定めた上で、適切な運用方法を検討しましょう。

保存方法が混在してしまう可能性があるため

電子帳簿保存法の改正によって、電子取引のデータ保存が義務化されています。これによって、取引書類の一部はデータで保存しなければいけなくなりました。紙で受け取ったインボイスを紙のまま保存していると、取引関係書類の一部がデータ、一部が紙で保存されることになり、管理に手間がかかります。そのため、保存方法がぶれないように、社内でルールを統一し、周知することが大切です。
 
また、紙でやりとりしたインボイスも、データでやりとりしたインボイスも同時に管理しやすいシステムを導入することで、電子帳簿保存法に則った管理が簡単にできるようになります。

 

インボイス制度と電子帳簿保存法への対応はシステム導入が便利



インボイス制度と電子帳簿保存法へのスムーズな対応には、システム導入が効果的です。インボイス制度と電子帳簿保存法の両方に対応できるシステムを活用することで、無理なく新しい法制度に対応していきましょう。
 
請求書や請求業務を中心としたデジタル化には「BtoBプラットフォーム 請求書」がおすすめです。BtoBプラットフォーム 請求書」は、請求書を電子データで発行するシステムで、システム自体が電子帳簿保存法に対応しているため、法制度にも無理なく対応できます。
 
インボイス制度にも対応しており、適格請求書発行事業者の登録番号を登録するだけで、自動で事業者登録番号が反映されたインボイスを発行することができます。受取側もデータで請求書を受け取れるので、1件1件ファイルやパスワードを確認する必要がなく、手間の削減につながります。顧客には無料で電子帳簿保存法に対応したシステムを利用してもらえるのもメリットのひとつです。まずは一部の業務からDXを進めていきたい場合や、改正電子帳簿保存方法、インボイス制度に対応しながら手軽にデジタル化を行いたい場合は、ぜひご活用ください。
 
また、発注段階から納品、請求業務までをまとめてデジタル化したい場合は「BtoBプラットフォーム TRADE」も併せてご検討ください。受発注業務をまとめてデジタル化することで、効率良くやりとりを完了できます。

 

よくあるご質問

Q. インボイス制度と電子帳簿保存法はどのような関係がありますか?

インボイス制度と電子帳簿保存法は、どちらも取引関係書類を対象としたそれぞれ異なる制度と法律です。しかし、インボイス制度に則って発行されるインボイス(適格請求書)は、電子帳簿保存法の対象である「取引関係書類」に該当するため、インボイスをデータで保存する場合は、電子帳簿保存法の要件を守る必要があります。

Q. 電子取引したインボイスは紙で保存してもいいですか?

電子取引したインボイスは紙で保存することはできません。電子帳簿保存法の対象である「取引関係書類」に該当するため、インボイスを電子取引した場合は電子帳簿保存法の要件を満たす形でデータ保存する必要があります。
 
詳しくは「電子帳簿保存法における保存期間は?紙・電子データの保存方法も解説」をご確認ください。

Q. 電子取引したインボイスはどのくらいの期間保存すれば良いですか?

電子取引したインボイスは、「インボイス交付日の属する課税期間の末日の翌日から2ヵ月を経過した日」から7年間の保存が義務付けられています。発行側の場合は発行したインボイスの写しを、受取側は帳簿および受領したインボイスを電子帳簿保存法の要件を満たす形で保存しましょう。

 

監修者プロフィール

宮川 真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上たちました。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っています。あわせて、CFP®(ファイナンシャルプランナー)の資格を生かした個人様向けのコンサルティングも行っています。また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事しております。

【保有資格】CFP®、税理士

請求書を電子化して、経理業務のコスト削減!
BtoBプラットフォーム請求書の詳細はこちら

BtoBプラットフォーム 請求書 資料ダウンロードはこちら
3分で詳しくわかる!「BtoBプラットフォーム 請求書」資料ダウンロード
  • 3分で詳しくわかる!「BtoBプラットフォーム 請求書」
  • 経理のトレンド理解や業務改善に役立つ『お役立ち資料』

電帳法・インボイス制度の対応も
業務効率化もこれ一つで!

BtoBプラットフォーム 請求書
資料ダウンロード

詳しくわかる資料をプレゼント
  • 01.本サービスの概要、特徴
  • 02.導入により改善・削減できる内容の事例
  • 03.本サービスの料金体系
  • 04.他社サービスとの機能比較一覧