電子インボイスとPeppol ~4コーナーモデルとは~

2023/07/10

自治体に行なったアンケートによると、会計事務等に関わる帳票類で、DXへの優先度が最も高いものは、請求書でした。

現在、自治体が民間事業者から受け取る請求書は、帳票類の中で最も件数が多く、付随する業務時間も膨大です。この請求書がデジタル化できれば、業務時間は大幅に削減でき、会計事務の完全DXに向け、意義や効果に大きな期待が生まれます。

しかし、デジタル化にむけての障壁もあります。特に挙げられるのは、①他部門との調整②全てデジタル化しないと業務が煩雑になる ③制度設計がわからない...の3点です。

今回の『DX通信』では、請求書のデジタル化への取り組みを、アンケート結果や自治体の実証実験パターン(記事参照)からご紹介していきます。

「自治体会計事務等DX に関するアンケート調査」のご報告③

「第1回GtoB 会計事務等DX研究会」での自治体アンケート結果から、今回は請求書のデジタル化をどのように考え、取り組もうとしているかについてご紹介します。

Q1. 請求書のデジタル化にあたり、債主の押印を定めた会計規則等をどのように改訂しますか?

まず、何らかの電子データを用いる形式で請求書のデジタル化を検討している自治体は、全体の27.6%でした。それらの自治体に対して「債主の押印を定めた会計規則等をどのように改訂することを想定しているか」と尋ねたところ、下記のような答えが返ってきました。

Q1. 請求書のデジタル化にあたり、債主の押印を定めた会計規則等をどのように改訂しますか?
請求書のデジタル化にあたっての会計規則等の改定想定 (回答数) (比率)
単に押印の義務づけを除く 7 29.2%
会計管理者が別に定める手法を用いる場合に限り、押印を不要とする 6 25.0%
専用のシステムを用いる場合に限り、押印を不要とする 0 0.0%
その他 11 45.8%
無回答 0 0.0%

(N=24)

<その他の回答>

  • 具体的な仕様や導入時期は未策定であるが、請求書のデジタル化は今後必ず実施したいと考えている。
    導入の際は、単なる押印廃止だけではなく、請求データから自動で支出命令の起票が可能なシステムを構築し、各課の工数の削減を目指したい。システム連携が必要。
  • 改訂の内容等を含め今後検討予定。

Q2. 請求書をデジタル化した場合、支出命令作成から会計管理者が行う審査業務をどのように見直しますか?

さらに「請求書をデジタル化した場合、支出命令の作成から会計管理者が行う審査業務を、どのように見直すことを検討しているか」との問いには、「請求書データからほぼ自動的に支出命令を作成し、審査業務を大幅に削減する」ほかに「支出命令は手作業で作成する」や「審査業務は従前の体制を維持する」といった方法もみられました。

Q2. 請求書をデジタル化した場合、支出命令作成から会計管理者が行う審査業務をどのように見直しますか?
請求書のデジタル化にあたっての会計規則等の改定想定 (回答数) (比率)
請求書データから手作業で支出命令を作成する。審査業務は従前の体制を維持する。 8 33.3%
請求書データからほぼ自動的に支出命令を作成する。審査業務は大幅に削減する。 6 25.0%
請求書データからほぼ自動的に支出命令を作成する。審査業務は従前の体制を維持する。 2 8.3%
その他 7 29.2%
無回答 1 4.2%

(N=24)

会計事務全てのデジタル化が理想的ですが、これは他部門との連携や大がかりな規則の改訂を必要とします。そこでできることから取り組み始めようと考える自治体も多いようです。

取引先にも、請求書の電子発行がすぐには難しい事業者がいますから「互いにできることから」という意識が、改革を進めるカギのようです。

世の中のデジタル化は徐々に進みます。紙で受け取る請求書は減っていき、いずれゼロになる日が訪れます。その日のためにも、今、始めることが重要だと、当社は考えます。

請求書DXに向けた実証実験の方法①

ここでは、請求書のデジタル化に向けた実証実験の具体的な方法を、実例をもとにご紹介します。

実証実験には、備品購入に関わる請求書を対象に行われる事例が非常に多いです。理由は、自治体が受け取る請求書の中で、圧倒的に件数が多く、デジタル化をした場合の効果も期待できるためです。

実証実験は、当社の電子取引システムBtoBプラットフォーム 請求書を用いて、自治体と事業者との請求書の受け渡しを行ない、効果や課題を検証していきます。

請求書DXに向けた実証実験の具体的な流れ

具体的な流れは上の図のとおりですが、2通りの方法があります。

1つは、実際の取引先である民間企業1~2社に当社のシステムを導入してもらい、請求書の受け渡しを行うリアルな実証実験。もう1つは自治体内で担当者が取引先になりかわって請求書を発行する模擬的な実証実験。各自治体の都合で選んでいただけます。

現在までの検証結果では、当社のシステムで請求書の受け取り・財務会計への取り込み・庁内の決済まで電子化した場合、請求処理にかかる時間は平均約69%の削減に成功しています。検証する項目と検証結果の詳細は、こちらの関連記事でご説明します。

会計事務等DXの実証実験に興味をもたれましたら、当社までご連絡ください。さらに詳しくご説明させていただきます。

電子インボイスとPeppol ~4コーナーモデルとは~

2023年10月から始まるインボイス制度では、電子インボイスの普及が期待されていますが、そこで重要な役割を担うと言われるのが、Peppolです。

Peppolは請求書(インボイス)などの電子文書をネットワーク上でやり取りするための国際標準規格で、文書の仕様や運用ルールなどが定められています。

Peppolを理解するうえで重要な概念は4コーナーモデルと呼ばれる仕組み。図を使ってご説明しましょう。

電子インボイスとPeppol ~4コーナーモデルとは~
※デジタルインボイス推進協議会 WEBサイトより引用

送り手(C1)は、自らのアクセスポイント(C2)を通じてPeppolネットワークに接続し、電子インボイスを送信すると、インボイスデータが受け手のアクセスポイント(C3)を経由して、受け手(C4)へ届くという仕組みです。

電子インボイスの送受信を可能にするクラウドサービスは年々増えていますが、従来の仕組みでは、異なるシステム間で電子インボイスのやり取りはできません。Peppolに準拠した電子インボイスを使用すると、システムの異なる取引先でも、データが授受できるようになります。またPeppolは国際標準規格なので、グローバルな取引でも請求書業務が進められます。

これが、Peppolが電子インボイス普及の救世主といわれる所以です。会計業務における真のデジタル化には、Peppolの理解と導入への取り組みが必須となるでしょう。

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