無料オンライン相談

企業価値とは?基礎的知識と事業価値・株主価値との違いを解説

企業価値は、社会における企業の価値を示す言葉です。しかし、具体的にどの金額を用いて価値としているのかよく分からない人もいるでしょう。企業を比較する指標としては、ほかにも事業価値や株主価値などがあるのです。ここではこれらの指標との違いを詳しく解説します。

企業価値とは?基礎的知識と事業価値・株主価値との違いを解説

最終更新日:2021年10月06日

目次

企業価値とは?

企業価値とは、社会における現時点での企業が持つ全体的な価値や魅力(株主・債権者・投資家)を測る指標です。最初に企業価値の一般的な概念とその役割を解説します。

企業価値の定義

企業価値では、企業の価値を金額として表します。会社全体の経済的な価値を示しており、M&Aや投資においての根拠・基準となるものです。

企業価値の概念については多様な考え方が存在し、表現方法も多彩となっています。たとえば、企業が生み出すキャッシュフローの割引現在価値、将来的に生み出す利益を含めた現在の企業価値といった捉え方です。

事業価値だけではなく、預金や遊休地、投資用有価証券といった非事業用資産も含めます。また純資産価値にくわえて、のれん(営業権)と呼ばれる超過収益力、貸借対照表に計上されない無形資産・知的財産価値をも含むのです。

※キャッシュフローの詳細は「キャッシュフローとは?キャッシュフローの重要性と計算書の読み方を解説」を参照ください

企業価値の役割

企業価値は総体的な「企業の値段」であり、社会的位置づけを測る物差しとなります。企業価値が高ければ、M&AやTOBの際、交渉における優位性が確立できるため、倒産防止に寄与するのです。

経済が不確実・不透明さを増している社会環境では、いかに正しく企業の真価を見極めるかが重要となります。企業価値の向上は、運営存続に大きくかかわるといえるでしょう。

企業価値が重視される背景には、経営環境の変化もあるのです。市場のグローバル化により、自社の成長性と将来性を明確に示す必要が増しています。

そのなかで国内でも、
・ステークホルダー(株主・債権者・投資家など)中心の日本型経営
・執行と監督分離型(米国型企業統治)

など企業経営の多様化が進行。より客観的な、企業価値の指標としての役割が注目されているのです。

また企業の責任が拡充し続けており、社会的責務・企業倫理の確立が求められています。透明性を担保するうえでも全体的な企業価値を明らかにし、企業の魅力を可視化することが重要です。CFOはこれらの状況を踏まえたうえで、企業の企業価値の設計者としての責任を果たす役割を担います。

※CFO(最高経営責任者)の詳細は「CFOとは?企業経営に財務の面から積極的に関与するCFOになるためのポイント」を参照ください


企業価値の高さがもたらすメリットと向上する方法

企業価値が現代経済における重要な指標になる点を踏まえながら、企業価値を向上させるメリットとその手法について見ていきます。

企業価値の高さがもたらすメリット

企業価値の高さが示すのは、収益が安定している点。それにより「企業経営が良好な状態にある」「的確な事業運用が行われている」などが示されます。こうした企業は健全な経営状態であるため、倒産のリスクが低く、また将来のキャッシュフローを多く生み出す可能性も高いのです。

こうした社会的な評価の高まりとともに、金融機関からの信用も向上します。事業拡大や設備投資などで融資を受けやすくなり、運転資金にも余裕が生まれるでしょう。上場企業であれば株価が上がり、さらに企業価値が高まるという好循環が継続していきます。

企業価値を向上させる方法

ではここで企業価値が向上する一般的な方法を見ていきましょう。

収益の向上:さまざまな角度からビジネスモデルを見直し、コスト削減やシェア拡大、売上高の増大など自社にできるあらゆる収益の手段を探る

財務状況の確認:融資や負債の配分比率を見直し、財務レバレッジ効果、金利による節税効果を検討する

無形資産の確認:知的財産の活用や社員エンゲージメントの向上に注力し、企業の将来に向けた成長力を確保する

固定資産と事業資産(流動資産)を改善:企業経営に貢献しない資産の売却や不要在庫の処分、売掛金の回収時期や買掛金の支払時期の見直しなどにより、資産の合理化を進める

企業価値と事業価値の違い

続いて企業価値と混同されがちな、事業価値の概要と違いについて解説します。

事業価値は企業の稼ぐ力

事業価値(EV)とは、企業の「稼ぐ力」を総合的に評価したもの。事業活動からもたらされる価値を指し、純資産価値だけではなく、のれん(営業権)と呼ばれる超過収益力や貸借対照表に計上されない無形資産・知的財産価値も含まれます。

一方で預貯金や遊休地、有価証券、投資有価証券、出資金など事業外の資産は含みません。ベンチャー企業やスタートアップ企業などではこうした事業外の資産がない場合も多いため、両者が混同されがちな原因となっています。

事業価値は企業価値の一部

前述のとおり、企業価値は現預金や遊休地、純粋に投資目的である有価証券など非事業資産の価値も含めたものです。企業価値と事業価値の関係を式で表すと、以下のようになります。

 ・企業価値=事業価値(EV)+事業以外の価値(非事業用資産)

このように事業価値は、企業価値の一部分なのです。同義ではない点に注意しましょう。

企業価値と株主価値の違い

株主価値も企業価値と混同されがちな用語で、2つは負債の扱い方に違いがあるのです。企業価値と株主価値の関係について解説しましょう。

企業価値と株主価値の関係

現在において抱える負債は、株主価値に含まれません。

・企業価値:企業が将来どれだけのキャッシュフローを生み出すかを、現在価値で評価するもの
・株主価値:そこから負債を差し引いて、株主に帰属する価値を示すもの

ただし上場企業の時価総額などでは、企業価値と株主価値をほぼ同義とする場合もあります。企業価値と株主価値を式で表すと、以下のようになるのです。

・企業価値 = 株主価値 + 負債価値(債権者持分や他人資本、有利子負債など借入金を意味する) 

株主価値とデットライクアイテム

企業価値から株主価値を算出する場合、有利子負債以外に「デットライクアイテム」を控除する必要があります。デットライクアイテムとは、将来的な支出や損失または収入減少となり得る負債です。退職給付債務やファイナンスリース関連負債、資産除去債務や偶発債務などが含まれます。

デットライクアイテムの算出は時価で行われるものの、企業ごとに算出にくわえる項目が変わるので注意が必要です。

企業価値の計算

企業価値を実際に算出するためのポイントと、一般的な計算方法を解説しましょう。

企業価値算出におけるポイント

企業価値評価は機械的に行うのではなく、個々の事情に応じる必要があります。事業内容や運営状況など、実情を把握しなければ、社会的指標となる公正な企業価値を得られません。企業価値の算出では、特に将来的な可能性の数値化に関して適切な判断が求められるのです。

日本公認会計士協会「企業価値評価ガイドライン」では、企業価値等形成要因として以下の5つがあげられています。
一般的要因:社会・政治・経済・景気・法令など、企業経営に影響を与えるマクロ的な要因
業界要因:業界全体の状況や業界における位置づけ、競合他社の状況など
企業要因:評価対象となる企業そのものに起因する要因
株主要因:株主構成や株主との関連性、株式種類や発行状況など
目的要因:企業価値を算出する目的(取引・裁判・そのほか)

企業価値の算出は上記のような要因によって大きく影響を受けると同時に、評価目的によって価値形成要因の捉え方が変わります。また企業側が把握する自社の企業価値と、ステークホルダー(株主・債権者・投資家など)を含む買収側が把握する企業価値は、異なる場合が多い傾向にあるのです。
公正性を保つためには、複数の評価方法を使用した算出が必要でしょう。

企業価値を求める主なアプローチ法

企業価値を求める主なアプローチ法として一般的に使われるのは、下記のとおりです。

コストアプローチ:ネットアセットアプローチとも呼ばれ、会社の保有資産をベースに算出する方法。貸借対照表の純資産をベースにして算出され、簿価ベースの純資産をもとにする簿価純資産法と、資産と負債を時価評価した純資産をもとにする時価純資産法がある

インカムアプローチ:会社の収益性に着目した手法で、将来の利益予想やキャッシュフロー予想にもとづいて、価値評価を行う。キャッシュフローをもとにする代表的な手法にはDCF法、上場企業の理論株価を評価価値とする手法には残余利益モデル(オルソンモデル)などがある

マーケットアプローチ:市場の前例・類似例をもとにして株価を算出する。対象企業と同業他社の時価総額の比較、類似の買収事例などを参考して評価する方法などがある

企業価値は企業力を全体的に数値で見る指標

企業価値とは、企業全体の価値を数値で表したもの。算出する際は、事業活動による事業価値のほか、預貯金、投資有価証券や、遊休資産など非事業用資産も含めます。事業価値は企業価値の一部で、株主価値は企業価値から負債価値を差し引いた、株主に帰属する価値を指すものです。

企業価値の評価方法は企業の事情に合わせる必要があります。主な算出方法としてあげられるのは、「コストアプローチ」「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」の3つ。企業力を客観的・総体的につかめる企業価値は、現代社会の経済における明確な指標として使われているのです。

監修者プロフィール

『BtoBプラットフォーム 請求書』チーム 編集部

この記事は、株式会社インフォマートが提供する電子請求書サービス『BtoBプラットフォーム 請求書』チームの編集部が監修しており、経理や会計、請求業務に役立つわかりやすい記事の提供を目指しています。電子請求書TIMESでは、経理・経営に役立つ会計知識、DXによる業務改善、インボイス制度・改正電子帳簿保存法といったトレンド情報をご紹介します。『BtoBプラットフォーム 請求書』は請求書の発行・受取、どちらにも対応し、業務効率化を推進します。

請求書を電子化して、経理業務のコスト削減!
BtoBプラットフォーム請求書の詳細はこちら

BtoBプラットフォーム 請求書 資料ダウンロードはこちら

電帳法・インボイス制度の対応も
業務効率化もこれ一つで!

BtoBプラットフォーム 請求書
資料ダウンロード

詳しくわかる資料をプレゼント
  • 01.本サービスの概要、特徴
  • 02.導入により改善・削減できる内容の事例
  • 03.本サービスの料金体系
  • 04.他社サービスとの機能比較一覧