最終更新日:2016年7月29日
目次
監査役(会)設置会社
株主総会で取締役と監査役を選任して、取締役会で会社の意思決定をします。取締役会では代表取締役を選任して、取締役会で決定した事項について代表取締役が業務執行をします。監査役(会)は取締役会における意思決定をチェックして、取締役会は代表取締役の業務執行をチェックするというのが、馴染みのある株式会社のガバナンスです。監査役(会)設置会社といいます。
委員会設置会社
2002年には、アメリカの制度を基にして、委員会設置会社という形態が登場しました。監査役を置かない代わりに(アメリカにはそもそも監査役制度はありません)、取締役会の中に、指名委員会、報酬委員会、監査委員会という3つの委員会を設置して、経営の監督を行います。取締役会で執行役を選任して(取締役が執行役を兼任する例が多い)、選任された執行役が業務執行を行います。取締役会を、経営の監督機能と業務執行機能に分離する形になります。
監査等委員会設置会社
今回話題の監査等委員会設置会社は、2014年の会社法改正で導入されました。前述の委員会設置会社の導入が進まなかった点を踏まえて、指名委員会、報酬委員会の設置を不要とし、監査委員会だけの設置でよしとしたものです。
具体的には、監査役を置かない代わりに、取締役をチェックする取締役と、それ以外の取締役に色分けします。このチェック側の取締役のことを「監査等委員である取締役」といい、それ以外の取締役を「監査等委員である取締役以外の取締役」といいます。「監査等委員である取締役」については3名以上であることや、過半数が社外取締役であることが必要となります。「監査等委員である取締役以外の取締役」は経営上の意思決定や業務執行を行い、最低一人は代表権を持つことになります。取締役会の決議が必要な事項については、「監査等委員である取締役」、「監査等委員である取締役以外の取締役」がともに議決権を持ちます。
会社法でいう取締役と執行役員との違い
以上は、株主総会で選出される「取締役」の話ですが、よく混乱するのが「執行役員」という言葉です。取締役が会社との委任関係なのに対して、執行役員は会社との雇用関係となります。つまり「役員」という名がついていますが、株主総会で選出された取締役ではありません。取締役というのは会社法上の用語で、「会社の重要事項についての意思決定をする人」をいいます。一方。執行役員というのは会社法上の用語ではなく、「決定した重要事項を実行する人」をいいます。執行役員は「役員」という肩書でも、課長や部長といった社内の役職の一つ、一番上の役職ということになります。人事部長兼執行役員、開発部長兼執行役員、兼職なしで常務執行役員や専務執行役員という肩書もあります。なかには「代表取締役兼執行役員」のように、取締役と執行役員を兼務することもあります。
執行役員は実行部隊のトップとして、「監査等委員である取締役以外の取締役」とともに経営会議(名称は会社によって様々)に参加して、会社の業務執行を議論します。
公認会計士/税理士 西谷俊広でした。
まとめ
監査等委員会設置会社は、2014年6月の会社法改正により導入されて以来、上場企業の間で急激な広まりを見せています。その要因の一つは、それまでの株式会社のガバナンスの形態である、監査役(会)設置会社や委員会設置会社よりも導入しやすいことです。監査等委員会設置会社において、違いがわかりづらい取締役の役割を中心に解説しました。
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プロフィール
西谷 俊広
1968年10月18日生まれ。東京外国語大学英米科卒業。
公認会計士・税理士。西谷会計事務所 所長。
西谷会計事務所ホームページ
https://www.nishiya-kaikei-jimusyo.com/