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変わる経理~求められる理想と現状の乖離-経理部門のあるべき姿-

人工知能(AI)やビッグデータがもたらすデジタル社会の構造変革が加速している。近い将来、多くの仕事がAIやロボットに奪われるともいわれ、中でもバックオフィスは、2030年までに国内で140万人以上の需要が減少するとの試算もある(2016年経済産業省資料による)。将来消滅する仕事として経理・財務は名指しされているのだ。変革の波はいやおうなしに押し寄せている。編集部が実施したアンケートでも、回答した約7割の経理・財務部門関係者が、「変化を求められている」と感じていた。では実際に今、何が求められ、今後どう応えていくべきなのだろうか。これからの「経理」の話をしよう。

変わる経理~求められる理想と現状の乖離-経理部門のあるべき姿-

最終更新日:2019年03月11日

目次

経理・財務の業務内容について経理パーソン&管理職1725人に調査!

【アンケート回答者の内訳】

経理財務部門に関わる 管理職…644人 一般職…1,081人
●流通/小売業…24% ●製造業…17% ●サービス業…19% ●建設/不動産業…11%
以下、●医療/福祉 ●運輸業 ●情報通信業 ●電力/ガス/水道 ●放送/出版/マスコミ/広告 ●通信販売業 ●金融/保険業 ●旅行業 ●学校 ●官公庁 ●地方自治体 ●その他

【 調査概要 】

◆調査方法:メール送信と調査票によるアンケート
◆調査内容:経理・財務の業務内容に関する調査
◆調査期間:2018年12月6日~17日

▶2020年度版経理パーソン&管理職1915人に聞いた「これからの経理」アンケート
※ご覧いただいている記事ページは2019年度版の記事です。上記リンクから2020年度版をご覧いただけます。

Q1 いま、経理・財務部門に変化が求められていると感じますか?

Q2 Q1で変化が「求められている」を選択した方にお聞きします。それはどのような変化ですか?

業務の効率化、生産性の向上(運輸業/部長)

■企業収益の確保のため、合理化・ペーパーレス・AI導入等の対応を、より一層進めざるをえない状況です(流通・小売業/部長)

経営判断に役立つ経理情報のリアルタイムの提供と、その精度を高める(製造業/一般職)

受動から能動へ(流通・小売業/部長)

■経営陣が経営判断に必要となる情報提供を行うために、企画提案型の経理となる必要がある。(流通・小売業/一般職)

■これまで経理・財務全体を把握できる人材が理想の人材とされてきたが、これからは業務全体を把握できる人材と、特定の業務に特化したプロフェッショナルな人材の、ふたつを一人で持ち合わせた人材を育成できるかが重要なポイントになると思う。(流通・小売業/一般職)

過去会計から未来会計へのシフト(サービス業/係長)

■経営サイドから月次決算の早期確定が求められている。また細かなKPI 分析に基づいた実績の分析も必要とされてきている。(旅行業/課長)

■例年通りとか、これは当たり前のこととかの固定概念を無くし、これからに向けた財務処理(流通・小売業/経営者)

■より早く、簡潔に。(建設・不動産業/経営者)

■脱属人化、見える化だと思います。これまでは、人員の入れ替わりや、監査法人が変わる毎に、それらの内容を把握するのが困難でした(その他/経営者)

■単なる会計処理・財務諸表作成は機械化し、経理は経営運営に対し、計数を基に合理的なアドバイス・遵法経営に従った意見を言える部門になること(流通・小売業/部長)

■RPA化・電子化・オンライン化(運輸業/課長)

■数字を計算するだけでなく、どうやって数字を作るための行動ができるか(製造業/課長)

■目まぐるしく変化するIT技術への対応(製造業/一般職)

経営戦略に絡む役割へ――。
求められる理想と現状との乖離     かいり が浮き彫りに

今、経理・財務部門にはどんな変化が求められているのか。

具体的な声を拾い上げてみると、国をあげた「働き方改革」が浸透してきた昨今を反映するかのように、業務の効率化や生産性向上といったキーワードが目立つ。

一般的に、経理は属人化しがちで、効率的とは言い難い業務が多い。人員の離職や異動のたびに発生する、職人技のようなノウハウの引き継ぎなど、課題を感じる場面もあるだろう。

一方で、単なる会計処理にとどまらない経理への変化も求められている。アンケートから浮かびあがるのは、経営判断に必要な会計情報を提供し、場合によっては適切なアドバイスを経営陣に与えるといった、より積極的な提案型の管理会計を望む傾向だ。

データ分析は経理部門の生みだす付加価値であり、経営に直結する基盤である。経理が本来果たすべき役割といってもいいだろう。だが、別の見方をすれば、現状の経営分析や財務戦略が充分ではないからこそ、現実の声として受け身の経理から提案型への変化を求められているともいえる。

実際に、経理本来の役割を果たせているかという問いには、全体の6割が「いいえ」と回答している(Q3)。経理部門の業務を占めているのは、「入出金の処理・管理」や「会計処理、決算業務」といったルーティンワークがほとんどだ(Q4)。

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では、求められている役割が思うように実現できていないのは、なぜだろう。

▶関連記事:2020年度アンケート「経理本来の役割とは~経営判断のサポートや事業計画の提案も」

Q3 経理・財務部門が本来担うべき役割を、貴社では実現できていると思いますか?

Q4 現在、貴社の経理・財務部門が行っている業務をすべて選択してください。

Q5 本来担うべき役割を実現するために解決すべき課題は何ですか?(複数回答)

以下、「新しいものへの抵抗心」「情報共有の不足」「評価制度」と続く。フリー回答には「人員不足」「世代交代を進めたいが適当な人材がいない」なども。人材の獲得や、社員のスキルアップのための体制作りも大きな課題のようだ。

Q6 直近の3年程度で、貴社の経理・財務部門で業務改善などの新しい取り組みを行いましたか?(複数回答

その他、「研修制度の設定」「アウトソーシングの導入」「後継者の育成」などの回答もあがった。また、全体の3割に及ぶ企業が新しい取り組みをしていないことも判明。業界や意識の差違により、経理部門に求める役割は大きく異なり、そのため業務改善への意識にも開きがあると推察される。

変化を阻む要因は、「スキル不足」と「業務過多」

数字の分析や提案で経営に貢献する姿が求められながら、実際には税務・財務会計業務がメインとなっているのはなぜなのだろう。

課題の筆頭としてあげられているのが「スキル不足」と「業務過多」だ(Q5)。日々、ルーティン業務に追われ、その処理に手一杯で他のことができずにいるのが現状のようだ。

その解決策として最も多かったのは「人員の配置や役割の見直し」だが、実は「新たな取り組みができていない」という回答も多数を占めている。多くの企業の経理部門では、締め処理や決算業務などが、ある特定の期間に集中して極端な繁忙期が発生する特徴がある。その限られた期間のためだけに人員を増やすことはできない、というジレンマもあるだろう。

近い将来、経理はAIやロボットにとって替わられるともいわれている。現在の実務の大半となっている仕訳処理や伝票の起票といったパターン化できる事務作業ほど、スピードも正確性の面でも手入力の比ではない。

すでにAIを搭載したシステムは活用段階に入っており、たとえば大手監査法人が不正会計のチェックにAIを使う監査システムの開発に着手し、実用化を目指している。

AIの登場を待たずとも、クラウドやRPAといった先端技術はもはや身近なものとなった。アンケートでも、人員配置や作業工程の見直しに加え、新たなITツールの導入で業務の改善に取り組もうとしている一定の動きが読み取れた(Q6)。

逆に言えば、そうした先端技術を取り入れた業務改革なしには、次世代の経理にシフトしていくことはできないだろう。現時点では、まだ手作業が多く、業務過多でその知識やスキルを身につけるまで至っていない状況、といったところだろうか。

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Q7 一般職の方へ

あなたご自身が、現在お持ちのスキルを教えてください。(複数回答)

上位5位が突出した結果になった。Q2で多く回答された、経営に深く関わる役割を担うためのスキルは、現状ではまだ持てていないと自認している。  

Q8 管理職 一般職の方へ

「実務担当者」に必要だと思うスキルは何ですか?(複数回答)


管理職が部下に求めるスキルは、既存の業務に付随する回答が圧倒的。対し一般職は「ITツールの知識・スキル」が、新たに必要として突出している。さらに「データ分析」や「経営戦略、事業計画の提案」といった、次世代の経理に求められるスキルへの意識も高い。

Q9 管理職の方へ

「管理職」に必要だと思うスキルは何ですか?(複数回答)

 

以下、6位「財務戦略の企画立案・実行」7位「内部統制の整備・運用」8位「新しい情報の収集」9位「経営戦略、事業計画の支援」と続く。管理職は、経営に深く関わる業務は主に役職者である自分たちの役割と捉えているようだ。

▶関連記事:見直し迫られる内部統制

未来を見据えた意識改革。
生産性が向上すれば新たな付加価値提供がスムーズに進む

解決すべき課題の1位にあげられていた「スキル不足」についても、すでに多くの経理パーソンが「これから」どうなるかを想定して意識していることが、アンケートの結果から見えてくる。

管理職よりも、実際に日々、事務処理にあたっている実務担当者ほどその傾向は顕著だ。「データ分析」や「情報の収集」「ITツールの知識・スキル」といった項目を、いま持っているスキルより必要になっていくと考えているのがわかる(Q8)。それらの項目への意識は、現時点でのスキルや、管理職が実務担当者に求めている意識よりも突出して高い。

▶関連記事:ロボットやAI化の時代に求められる役割他

さらに、経理の役割である経営の基盤となる高い専門性も身に着けたいと考えている様子がうかがえる。

現状においてメインとなっている業務の大半が省人化される未来、新たな価値となるのは、人にしかできない仕事であることに気付いているようだ。

経理の仕事を奪うともいわれる先端テクノロジーだが、その導入目的と効果は、もはや業務効率化による生産性の向上にとどまらない。情報を収集して分析するツールとして使いこなすことで、単なる集計ではない、経営戦略とリンクした数字の活かし方ができる。次世代の経理は新たな付加価値をもって、利益を生む部門になるだろう。

Q10 経理・財務部門が本来担うべき役割は何だとお考えですか?

利益を出すこと(運輸業/部長)

決算業務、各部門で作成すべき予算データの集計、分析がメインの役割であると考えます。会計処理等はそれに付随する業務であると思います。(建設・不動産業/一般職)

数字で会社の利益を考え社員に正しく還元する(製造業/一般職)

■会計を通じて会社経営に参画し、経営方針・経営判断に積極的に関与すること(サービス業/一般職)

会社経営の舵取りに必要な情報や、外部に対して必要な情報開示を正確で速やかに発信すること。そのためには会計、税制のルールに精通したスペシャリストが揃っていることだと思います。(製造業/課長)

縁の下の力持ち(建設・不動産業/一般職)

財務の健全化、見える化(サービス業/課長)

経理・会計処理の正確性本来担うべき役割は何だとお考えですか(その他/一般職)

経営戦略の元となる指標の作成る(金融・保険業/経営者)

営業から施工管理、工場での現場作業員、全ての人に関わる仕事なので、他部署との連携を円滑にすることは経理・財務部門でしかできないと思う。(流通・小売業/一般職)

■法令順守(金融・保険業/一般職)

■投資計画への適切な助言、実行フォロー、実施後検証。(製造業/課長)

■スピード処理(その他/一般職)

■会社の経営を支える中枢として日々正確な処理を遂行すること(サービス業/課長)

先見の明をもった経理は輝く新天地を指し示す

経理の基本的な業務は会計処理であり、財務管理であることは揺るがない。スピーディな処理や正確性は一層必要になる。加えて、これまでみてきたように、経理は今、大きな変革のうねりの中にある。

今後求められる役割は間違いなく、財務・税務会計だけにとどまらない。管理会計へ重きを置いた、より戦略的な領域で、経営陣を導く軍師のような姿が求められていくだろう。

アンケートの回答でも、これからの経理の姿は、想像以上に具体的に思い描かれていた。管理職・実務担当ともに共通して、数字を活かして経営のサポートをする立場を意識している。 

会計データを分析し、収支の予測を立てて、適切なアドバイスを行う。いわば、大海原をゆく会社という船の舵取りに、羅針盤や海図でもって進むべき進路を示す仕事だ。

羅針盤を使いこなし、海図を読み解く能力に磨きをかければ、帆にいっぱいの追い風を受けた、快適な航海となるにちがいない。

比較してみよう!2020年度のアンケート結果はこちら「経理本来の役割とは」

まとめ

経理パーソン&管理職1725人に聞いた「これからの経理」アンケートの結果から見えてきたのは、「これまでの経理の姿」と「これからの経理のあるべき姿」だ。理想の経理に移行するために必要な“業務の効率化”という課題が浮き彫りになった。その課題解決に期待が寄せられていたのが、IT化だ。

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後編では、実際に業務改革で新たな価値の提供を実現できた事例として、株式会社ディー・エヌ・エーの取り組みを紹介する。

※本記事は更新日時点の情報に基づいています。法改正などにより情報が変更されている可能性があります。

監修者プロフィール

『BtoBプラットフォーム 請求書』チーム 編集部

この記事は、株式会社インフォマートが提供する電子請求書サービス『BtoBプラットフォーム 請求書』チームの編集部が監修しており、経理や会計、請求業務に役立つわかりやすい記事の提供を目指しています。電子請求書TIMESでは、経理・経営に役立つ会計知識、DXによる業務改善、インボイス制度・改正電子帳簿保存法といったトレンド情報をご紹介します。『BtoBプラットフォーム 請求書』は請求書の発行・受取、どちらにも対応し、業務効率化を推進します。

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