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発注と注文の違いとは? 発注書の書き方や電子化についても解説

正しい方法で発注業務を遂行するために必要な、発注業務の流れや法的義務について解説します。また記事後半では、発注書を電子化するメリットとデメリットについても解説するので、発注業務の効率化を実現したい方は併せてご覧ください。

発注と注文の違いとは? 発注書の書き方や電子化についても解説

最終更新日:2023年12月13日

目次

「発注」の基本

「発注」の意味や、「発注書」を発行するのに必要となる基礎知識を解説します。また、「注文書」を発行する企業もありますが、「発注」と「注文」は違うものなのかどうか、定義についても解説します。

発注とは

「発注」とは、注文を出すことを意味する言葉です。
 
一般的にビジネスにおいて、備品・商品・サービスなどの購入を申し込んだり、仕事を依頼したりするときに使われます。

発注書とは

「発注書」とは、商品やサービスを発注する際に、申し込みの意思を明示するために作成する書類です。
 
発注側が発行する発注書に対して、承諾の意思を明示するために「発注請書」を発行する場合もあります。
 
また、一般的に、発注書は事前に受注側から見積書が提示され、内容や金額に合意した後で発注者によって発行されます。
 
発注書には下記のような形式があります。

① 書面
② メール
③ FAX
④ 伝票
⑤ クラウド形式
民法上では、「申し込み」と「承諾」さえあれば、発注書や契約書などの書面がなくても、口約束で契約は成立するとされています。そのため、必ずしも発注書の発行が義務付けられているわけではありません。
 
では、法的義務がない発注書をなぜ発行するのかを続いて解説します。

発注書を発行する理由

発注書を発行する主な理由は、取引内容に齟齬が生じるなどのトラブルを未然に防ぐためです。そのため、取引内容に齟齬が生じる余地などがなければ、あえて発注書を発行する必要はありません。
 
一方で、下請法(下請代金支払遅延等防止法)が適用される取引においては、親事業者が書面を発行することが義務付けられています。
 
"親事業者は,下請事業者に対し製造委託等をした場合は,直ちに,公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容,下請代金の額,支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。"
 
引用元:下請代金支払遅延等防止法 第3条(書面の交付等)|公正取引委員会

 
下請法の対象となる取引は、事業者の資本金規模と取引の内容で下記の通りに定義されています。

下請法の対象となる取引の概要を示した図
出典元:下請法の概要|公正取引委員会




発注と注文の違い

次に、「発注」と「注文」の違いについて解説します。

法的な違いはない

「発注」と「注文」に法的な違いはありません。言葉の表現の違いだけで、明確に定義されているわけではありません。
 
ただ、一般的に使われやすい傾向はあるので、ここではその傾向について解説します。

発注は主に企業に依頼するときに使う

「発注」は一般的に、加工などの作業が要求されるような製品の注文や、サービスを業者へ依頼する場合に使われることが多い傾向にあります。
 
例えば、建築・工事・製造・印刷・受注生産品などの注文・依頼において、「発注」という語が使われる傾向にあります。
 
一方で、備品などを購入するときも「発注」と言う場合があるので、必ずしも商品ができるまでに作業が必要なものとは限らず、あくまでも傾向です。

注文は主に個人に依頼するときに使う

「注文」は、個人でサービスを受けるときや、形が既にあるもの、形がなくてもすぐに提供されるものに対して使用されることが多い傾向にあります。
 
例えば、飲食店・スーパー・ホームセンターなどでは「注文」の語を使うのが一般的です。ただし、ホームセンターで木材の加工サービスを利用するなど加工の工程がある場合は「発注」を使う場合もあります。
 
また、形が既にある材木やボルトやナット、釘などの部品は「注文」が使用される場合もありますが、注文数や取引の関係によって「発注」が使用される場合もあるなど、やはり両者の定義はあいまいです。


発注業務の流れと手順

ビジネスにおける発注業務の流れと手順について解説します。

見積もりを依頼する

まず発注側は、商品の注文や仕事の依頼をする前に、受注側に見積もりを依頼します。その際、見積書に記載される事項は下記の通りです。

<見積書の主な記載事項>

 ・商品やサービス内容の明細
・単価
・数量
・合計金額など
見積もりの段階では、内容や数量、金額などの交渉が可能で、双方が合意するまで見積書が複数回発行されることもあります。

発注する

見積書の内容に発注側・受注側の双方が合意すると、正式に発注となります。
 
なお前述した通り、発注書の発行は契約が成立する上で必須ではありません。よって、発注書の発行は省略されることもあります。
 
発注書を発行する場合は、必ず見積書と同様の内容・金額で発行しなければなりません。

検品する

発注していた商品が納品された時点で、直ちに検品を行います。
 
商品やサービスの仕上がりや提供内容に問題がないかを検査し、問題や不明点があれば受注側に速やかに確認しましょう。見積書や発注書の内容と相違がないかも確認します。

支払処理をする

検品が完了し、納品内容に問題がなければ、受注側の用意した請求書に対して、支払処理を行います。
 
 具体的な支払方法は取引や取引先によって異なり、場合によっては買掛金などの消込作業が発生する場合もあります。


発注書の法的義務と注意点

発注書の法的義務と、作成するときの注意点について解説します。

発注書の発行義務はない

発注書はビジネスにおいてトラブルが発生するのを防ぐ目的や、社内処理を円滑にする目的で発行されるものです。
 
前述した通り、下請法の対象となる取引を除けば、申し入れと承諾があれば契約は成立するので、発注書は法的に発行が義務付けられている必須の書類ではありません。
 
例えば、既に定期的に取引している取引先とは電話や口頭のやりとりだけで契約が成り立つこともあります。

発注書の保存期間は法人と個人で異なる

発注書は帳簿書類に当たるため、下記の通り保存期間が定められています。
 
<法人>
・事業年度の確定申告書提出期限翌日から7年間
・欠損金の発生する事業年度においては10年間
 
<個人事業主>
・書類(発注書、契約書、見積書、納品書など)は5年間

発注書に収入印紙が必要なケース

基本的に、発注書に収入印紙は不要です。
 
ただし、発注書が契約書もしくは請書として扱われる場合は、発注書が課税文書とみなされるため収入印紙が必要です。印紙税額は契約の金額によって異なり、契約金額が1万円未満の場合は不要とされます。
 
収入印紙が必要とされるのは、具体的に下記のような場合です。

<収入印紙が必要な具体例>
 
・基本契約書、規約または約款などに「発注書が提出された時点で個別契約が自動的に成立する」という内容の条項が記載されている場合
・発注書に見積書や書面に対しての申し込みであることが明記されている場合
・発注書に契約当事者それぞれの署名または押印があり契約書に該当する場合
収入印紙が不要とされる具体例は下記の通りです。

<収入印紙が不要な具体例>
 
・請書(請負書)が提出される場合
・メールやPDFファイルなど電磁的記録媒体で作られた電子文章で、かつメールやFAXで発注書を送った場合
請書が提出される場合は、「発注書=契約書」ではなくなるため、収入印紙の貼付は不要です。
 
メールやPDFファイルなど電磁的記録媒体で送る場合は、それが契約書に該当する内容か否かにかかわらず、収入印紙の貼付は不要です。
 
ちなみに、収入印紙貼付が義務付けられている課税文書に収入印紙を貼付しなかった場合は、最大で印紙税額の3倍までの過怠税が徴収されるので注意が必要です。


発注書・発注メールの書き方

発注処理にはいくつか形式があります。ここでは、発注書を発行する場合と、メールで発注処理する場合の書き方とテンプレートをご紹介します。

発注書に必要な事項

発注書は必須の書類ではないため、法律で定められた書式はありません。ただし、トラブルを未然に防ぐ目的で、下記の記載は最低限必要です。

・発注年月日
・取引内容(形式、製品番号、単価、数量など)
・希望納期
・納品場所
・問い合わせ先(電話番号)
また、下請法の対象となる親事業者が発注書を発行する際には、下記の12項目について記載することが、公正取引委員会の「書面の交付義務(第3条)」に定められています。
 
“【3条書面に記載すべき具体的事項】
(1) 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
(2) 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3) 下請事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう,明確に記載する。)
(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間)
(5) 下請事業者の給付を受領する場所
(6) 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,検査を完了する期日
(7) 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが,算定方法による記載も可)
(8) 下請代金の支払期日
(9) 手形を交付する場合は,手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
(10) 一括決済方式で支払う場合は,金融機関名,貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
(11) 電子記録債権で支払う場合は,電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
(12) 原材料等を有償支給する場合は,品名,数量,対価,引渡しの期日,決済期日,決済方法”

引用元: 親事業者の義務 | 公正取引委員会

発注書の例

発注書の例として、公正取引委員会・中小企業庁の「下請取引適正化推進講習会テキスト」に掲載されている注文書のテンプレートをご紹介します。テンプレートには「注文書」と記載されていますが、「発注書」も同様の書式で対応できます。

発注書(注文書)の例
出典元:下請取引適正化推進講習会 テキスト(PDF)|公正取引委員会・中小企業庁

また、「下請取引適正化推進講習会テキスト」には、書面に記載できない特定事項がある場合や、製造委託の場合の注文書のテンプレートなども記載されているのでご参照ください。
 
その他、価格の表示方法や数量の記載、支払期日など、各事項に記入の仕方や注意点が「下請取引適正化推進講習会テキスト」の「下請代金支払遅延等防止法第3条に規定する書面に係る参考例」に記載されています。発注書発行の際は併せてご確認ください。
 
リンク:下請代金支払遅延等防止法第3条に規定する書面に係る参考例(PDF)

発注メールのテンプレート

メールやPDFファイルで発注情報を送付する場合、収入印紙の貼付は不要です。つまり、発注書や契約書を発行しなくても、下記のように必要な内容さえ記載すれば、メールだけで契約は成立します。

件名:〇〇発注のご依頼
 
〇〇〇〇株式会社
営業部 〇〇〇〇様
 
平素よりお世話になっております。
株式会社△△XX部△△と申します。
 
先日は、お見積書をご送付くださり、誠にありがとうございます。
検討しました結果、御社へ発注させていただくことになりました。
つきましては、下記の通り発注内容のご確認、並びにご手配お願いいたします。
 
・商品名:〇〇〇〇
・製品番号:XXXX-XXXX
・数量:100個
・納品希望日:YYYY年MM月DD日
・納入場所:〇〇市〇〇区〇〇
 
ご不明な点がございましたら、
△△(電話番号:〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇)までご連絡ください。
何とぞ、よろしくお願いいたします。
 
(署名)
テンプレートを利用すると、業務の手間を省けて便利です。一方で、取引先や取引内容によって特例があったり、適切な形式が異なったりすることもあるので、細かなチェックが必要とされます。
 
また、紙の発注書やメールの対応は、管理する上で煩雑になりミスが起きやすく業務負担が生じることも課題です。


発注処理業務の負担は発注書の電子化で解決できる

発注書とメールの例をご紹介しましたが、発注処理業務が負担になっている場合は、発注書を電子化する選択肢もあります。
 
ただし、発注書の電子化にはメリットがある一方でデメリットもあります。そこで、電子化を検討する前にそれらを把握して適切に判断するために解説します。

発注書を電子化するメリット4つ

まずは、発注書を電子化する4つのメリットをご紹介します。

コスト削減できる

発注書の電子化はコスト削減につながります。具体的には、下記のようなコストを削減できます。
 
・印刷代や郵送代
・発注書の保管に必要なスペース
・発注書の保管に必要な備品費
 
電子化すればデータをサーバーやクラウド上に保管できるので、書庫やキャビネットなどの保管スペースも不要になります。

業務を効率化できる

発注書を電子化すると、発注処理に掛かっていた手間を省けることから、業務を効率化できます。
 
さらに、自社の会計システムなどと連携できる機能付きのシステムを選択することで、大幅に経理処理などの手間が省けます。

情報セキュリティー対策ができる

発注書を紙で保管している場合、保管方法によっては、誰でも簡単に閲覧できるなど、情報セキュリティー強度の問題が懸念されます。
 
一方で、電子化すれば、発注書の紛失・盗難などのリスク回避につながります。
 
データ消失の可能性や、セキュリティーの問題が皆無というわけではありませんが、下記のような対策によりセキュリティー強度を高められます。
 
・データのアクセス権限を設定する
・定期的なバックアップを実施する

下請法違反のリスクを回避できる

下請法が適用になる取引においては、親事業者から下請事業者へ発注書を発行する必要があります。しかし、発行した発注書の内容が下請法に則っていない場合、罰則を受ける可能性があります。
 
そこで、下請法に対応した発注書を発行する機能を持つシステムを導入することで、下請法違反のリスク回避にもつながります。
 
下請法に違反すると罰金が科せられるだけでなく、企業名や違反事実が公表され、企業としての信用が大きく損なわれる可能性があります。発注書の電子化は、自社の信用度を維持するためにも効果的な措置と言えます。


発注書を電子化するデメリット2つ

発注書の電子化には、デメリットもあるので把握しておく必要があります。

システム導入のためのコストや業務負担が発生する

システム導入の際には、紙の発注書をデータ化するために、下記のような作業が発生します。
発注書フォーマットの作成
・紙の発注書のスキャン
・紙の発注書をスキャンするため留め具を外すなどの手作業
・不要な書類の廃棄
加えて、下記のような費用が掛かります。
・複合機の購入代
・作業・保管場所の費用
・システム利用料
少なくともこれらの作業に掛かる業務時間や人件費、システム利用料などは綿密に計算しておく必要があります。

取引先の了承を得るのが困難な場合も

発注書を電子化するには、取引先の了承を得る必要があります。しかし取引先の中には、電子化が困難な企業もあることが予測されます。
 
なぜなら、取引先も上記のコストや業務負担が発生するためです。
 
そんな場合は、発注書を電子化することで得られるメリットを伝えてみるとよいでしょう。具体的には、取引先は少なくとも下記のコストと作業を削減できます。
 
・収入印紙を注文請書に貼付する必要がなくなるので、印紙税負担が削減できる
・発注書保管、請書作成、押印、印紙貼付、返送、書類のコピーなどの手作業が省ける
 
取引先の了承を得ることは、発注書の電子化においてハードルの高い課題の一つでもあります。一方的に電子化を進めるのではなく、取引先にメリットを明確に伝えて理解を得ることが大切です。


自社の信用度を高めるために発注書を正しく発行することが重要

発注書は、必ずしも発行しなければならないものではありません。一方で、取引先と良好な関係を築くために役立ちます。また、下請法違反は自社の信用度に大きく影響するので、下請法が適用となる取引においては、発注書を正しく発行することが重要です。適切な方法で発注業務を遂行するために、ぜひ参考にしてください。

<この記事のポイント>
・「発注」と「注文」の違いは、法的な定義はないが、一般的に「注文」は個人に対して、「発注」は企業取引に対して使用される傾向あり
・発注書の発行は、法的に義務付けられていないが、申し込みの意思表示を示す目的で発行されている
・発注書が正しく発行されない場合は、下請法違反となる可能性があるので注意が必要だが、下請法に対応している発注システムの利用によってリスク回避できる
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監修者プロフィール

石動龍

石動総合会計法務事務所代表
 
青森県八戸市在住。公認会計士、税理士、司法書士、行政書士。読売新聞社記者などを経て、働きながら独学で司法書士試験、公認会計士試験に合格。ドラゴンラーメン(八戸市)店長、ワイン専門店 vin+共同オーナー、十和田子ども食堂ボランティアとしても活動している。趣味はブラジリアン柔術(黒帯)と煮干しラーメンの研究。2021年中の不動産業開業が目標。



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