株式会社かに道楽取材日 2019年7月11日

素材で喜ばれるカニ料理の品質を保つため、
原価・アレルギー管理はシステム活用が欠かせません。

利用サービス 受発注(発注)規格書(買い手) | エリア 関西 | 業種 和食
株式会社かに道楽

動く巨大なカニ看板でお馴染みの、かに道楽様。大阪の道頓堀本店は地域のシンボルとして半世紀以上も親しまれ、近年では訪日外国人客の撮影スポットとしても人気です。ニーズが高まるハラールやアレルギーへの対応、そして高級食材カニの原価管理に、システム活用は必須とのこと。株式会社かに道楽の食品部次長に、カニ料理の品質を保つ取り組みについて伺いました。

ココがPOINT!

取引先への支払は創業以来、月末締め・翌15日払い

― カニ料理専門店の老舗として、2020年に創業60周年を迎えられますね。

食品部 次長(以下、次長):1960年に、山陰の魚介を使った料理店として創業しました。かに道楽1号店となる道頓堀本店のオープンは1962年で、以来ずっと同じ場所で営業しています。関西エリアを中心に国内41店舗を展開(2019年7月現在)している今でも売上が最も高いのは本店です。日本で一番カニを消費している飲食店といわれることもあるんですよ。

近年は、インバウンド需要の増加で海外からのお客様もたくさんお越しになります。道頓堀本店では約6割、多い時は9割ほどが外国のお客様です。看板メニューのかにすき鍋をはじめ、カニ料理専門という業態が珍しいと喜んでいただいています。ぷりぷりのカニ脚を持ちあげ下からかぶりつく様子を、SNSにアップするのが人気のようです。

もちろん海外のお客様だけではありません。これまで長年、支え続けてくださっている地域の方々や常連様の信頼にもお応えしたいと思っています。高品質のカニ料理をお楽しみいただけるよう、全社をあげて取り組んでいます。

食品部 次長食品部 次長

― カニという高級食材を扱うご苦労が、色々ありそうです。

次長:安価に提供するためにできるだけ原価を抑えたいのは、多くの飲食店の本音だと思います。特にカニは高い食材です。しかし、かに道楽が「安かろう悪かろう」という商売をしてしまってはお客様の信頼を損なってしまいます。良いものを、いかに美味しさを引き出す調理でお出しするか。そのために我々食品部は、カニの仕入では最も良いものを選んで買い付けること、各店舗はロスを出さない工夫に心を砕いています。

店舗運営は各店の裁量に任されており、全原価の実に6割を占めるカニの原価率を管理して採算を保つのは、店長の腕の一番の見せどころです。

棚卸と取引先からの請求書をもとに1ヶ月単位で理論原価と実原価の差異を集計するケースもあれば、1週間や10日単位で集計するところもあります。当然短期のほうがブレが発生していた場合の修正が早く、ロスを減らすことにつながります。しかし、伝票を集めて手計算で行うのは大変な作業です。

さらに、月末に締めた取引分は翌月15日に支払うため、店舗での集計を1日でも早く終えて経理へまわす必要もあります。

― 翌月15日の支払いは、飲食業界の取引では異例の早さではないでしょうか?

次長:新規のお取引先には驚かれることもありますね。我々にとってはあたり前で、創業時から、取引先は運命共同体であり、『利益折半の精神』が社是です。たとえば翌月末日払いでは、入金を1ヶ月お待たせしてしまいます。一度に動く金額も大きいですし、取引先の立場で考えれば、早くお支払いするほうが次の良い取引につながる、という考えなのです。

伝票集計に関しては、私が店長を務めていた2009年に食材の発注に『BtoBプラットフォーム 受発注』が導入されたことで、圧倒的に楽になりました。それまでは月末に請求書を紙でもらい、電卓をたたいて計算していたので、早くても1週間、通常10日以上かかっていたのです。それがすべての取引データがシステム上に蓄積されているので、月末締めの2、3日後には数字が確定します。1週間、10日単位でカニだけとか、主要商品だけの原価率を出すのも、手計算とは比べ物にならないほど簡単です。原価管理も支払管理もパッとできるので、店舗は非常に助かっています

規格書をシステムで管理し、ハラールやアレルギーに対応

― カニはアレルギーの特定原材料でもあります。食の安全にはどのように取り組まれていますか?

次長:カニはある意味わかりやすいのですが、最近は特に小さなお子様が、カニ以外のアレルギーをお持ちのこともあります。たとえばメニューに乳や卵などが使われていないか、というお問い合わせは、月に1、2度いただきます。

以前はお問い合わせは店舗任せ、あるいは必要があれば本部の食品研究室で対応していました。しかし店舗では商品の原材料表示を頼りにお答えするしかなく、どうしても限界があります。また、本店は海外からのお客様が多く、ハラールに関するお問い合わせも増えてきました。ハラールも厳密に対応しようとするとハードルが高いのですが、たとえば禁忌であるアルコールを調理過程で使っていなければOKとするお客様もいらっしゃいます。そこで2017年に商品規格書(※)情報を回収するシステム『BtoBプラットフォーム 規格書』を導入して、本部の食品部で一括管理をするようにしました。

(※)商品規格書:食品のアレルギーや原料産地などの情報をまとめた仕様書。

アレルギーやハラールに関していただくご質問は、ある程度決まっていますし、メニューは全店舗ほぼ同一です。そこで仕入の管轄である食品部で、このメニューにはこの原材料が使われているという一覧表を作成して、各店舗に持たせています。何かあってからでは遅いので、あらかじめすべてを明らかにしておくよう心がけています。

『BtoBプラットフォーム 規格書』をお使いの取引先は多く、クリックひとつで情報を集めることができて大変便利です。全国各地にある41店舗で扱う食材の情報すべてとなると膨大な量ですので、システムがなければ正確な管理は難しいでしょう。

― アレルギーやハラールの問い合わせにはどうご対応されていますか?

次長:特定の原材料を抜くなど、できるかぎりお客様のご要望にお応えします。どうしても味が変わってしまう、クオリティが保てないとなれば違った形にいたしますが、それはレアケースです。カニは調味料で味付けを変えたり足したりしていくよりも、素材をシンプルに味わっていただく方がお客様も喜ばれます。お客様の「カニを食べた」という気持ちを大事にしたいと思っています。

また、食の安心・安全という意味では、アレルギー情報の管理だけでなく食品事故を防ぐことも必要です。特にカニは熱の影響を非常に受けやすい食材です。流通の過程で一度解凍されてしまうと、再び冷凍しても味が落ちてしまいます。また、その他の食材も適切な温度帯や保存方法はそれぞれ違います。すべてを正確に追求するのは難しいのですが、万が一お客様からクレームをいただいた時、対応するのは店長です。正確な管理を把握しておく必要がありますし、そのためにも食品部が仕入れ情報を集め、蓄積してバックアップできるように備えています。

― 今後の展望をお聞かせください。

次長:まずは、カニの品質を絶対に落とさないのが大前提です。その上で仕入の視点で申しますと、海外企業との仕入れ競争が増してカニは年々高騰しており、苦しいところです。価格をお客様にご納得いただけるよう、そしてさらなるご満足をいただけるよう、付加価値も提供していければと思っています。たとえば、海外のお客様なら和室で着物に着替えて日本の文化を感じていただくという楽しみ方もあるでしょう。ただそれも、カニ料理のクオリティにご満足いただけなければ、結局続きません。

かに道楽にとっては、お客様にカニの美味しさを知り、喜んでいただくことが生命線です。そのためにも、いかに高品質のカニを選び、どう調理してお出しするか、さらなる追求を続けていきたいと思っています。

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株式会社かに道楽

設立1971年6月
事業内容かに料理専門レストランの経営
代表者代表取締役社長 今津 博之
本社所在地大阪府大阪市中央区西心斎橋2-9-16 網元別館5階
企業サイトhttps://douraku.co.jp/
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