有限会社ゑびや掲載日 2021年6月29日

店舗管理をIT化して、従業員はサービスに集中。
売上4倍・営業利益10倍、お客様満足度を高めます。

利用サービス 受発注(発注) | エリア 東海 | 事業内容 食堂の経営、観光用お土産の製造・販売、システム開発・販売、デザイン開発・提案 | 取材日 
有限会社ゑびや

伊勢神宮前の「ゑびや大食堂」は、大正元年の創業。地元民にも観光客にも親しまれる老舗は、コロナ禍にあっても従業員のモチベーションを維持し、苦境を乗り越えようとしています。
強固な組織を支えるのは、ITツールを使った店舗運営の仕組みといいます。老舗がいかにITを使っているのか。支配人とバックヤード業務をこなす担当者にお話を聞きました。

ココがPOINT!

    

伊勢神宮のおひざ元で、100年以上続く食堂

― ゑびや大食堂について教えてください。

支配人:ゑびや大食堂は伊勢神宮より徒歩1分ほどの参道にあり、席数160、従業員60人を抱えています。店内には土産物屋も併設しており、客層の8割が観光客です。中には毎年必ず来ていただくリピーターの方や、「伊勢神宮のご参拝に寄ったから」と立ち寄られる地元の方もいらっしゃいます。

地元の食材でお客様をおもてなししたいという思いがあり、メニューに使用する食材の9割は地元の三重産です。地元の生産者の方にも三重を楽しみに来る他県の方にも喜んでいただけると思っています。

支配人支配人

― 2016年、店舗をリニューアルされました。

支配人:昔からの大食堂でしたが、社長交代を機に思い切ってさまざまな改善策を実施してきました。外観をかえ内装も明るくし、ITツールを取り入れて店舗運営を新しくしたのです。各テーブルにタブレット端末を置いて、お客様にはメニューをゆっくり見ながらセルフオーダーでご注文していただきます。店側としてもオーダーの間違いは減るし、あちらこちらへ忙しく立ち回るようなことも減りました。

会計やPOSデータの分析には「TOUCH POINT BI」という自社で開発したシステムを使っています。90%以上の精度で来客予測ができるので、米の廃棄を7割削減できました。当店ではこのシステム導入の前後で,売上が4倍、利益率は10倍、従業員の平均給与は5 万円増になっているんです。他の飲食店様にシステムを提供するための事業会社を立ち上げて、いまはいろんな業態で使われています。

    

相次ぐITツールの導入で様々な業務のムダを削減

― ほかにIT化した業務はありますか?

バックヤード担当者(以下、担当者):大きく変えたのが発注方法です。2019年にインフォマートの『BtoBプラットフォーム 受発注』を導入して、インターネットの画面操作で発注するようにしました。

当店では仕入れ業者ごとにFAX、電話、メールと別々に発注していて、どの業者にどの品をどんな方法で発注するか把握しておく必要がありました。このため、もし発注担当が休むと仕入れができないので、手間をかけて引き継ぎをしていたのです。システム化したことで誰でも画面操作できるようになって、引き継ぎもずいぶん楽になりました。

発注操作も、iPadで画面を開いてボタンを押すだけで終わります。在庫を見ながら操作できるので、厨房で必要なものをメモして、事務所で用紙に書き込んで、FAXを送るという作業がなくなりました。

FAXの紙は紛失や置き忘れなどあったり、メールも埋もれていったりします。これだと発注内容の確認ができず、発注漏れや重複発注の原因になっていたのですが、発注履歴がシステムに残るので、確認も容易です。

バックヤード担当者バックヤード担当者

また、発注にかける時間も、大幅に削減できました。特に土産店では、商品の数も多いし取引先も膨大で、発注に1時間かかることもありました。売り場で在庫を確認して、納品日がいつかを確認して、担当の取引先にメールを送る。それも発注先ごとに、メールやFAXで「毎度お世話になっております」から書き始めなければならなかった。それがいまでは、かかっても10分ですからね。

支配人:発注する場合、担当を他の仕事から外して専念してもらわなければなりませんでした。平均で30分削減されたとして、これが年間だと人件費だけでも結構な負担になるわけです。

それに紙ベースだと、ムダな発注があると思っても、発注した紙を集めて何がどれだけムダかを集計するのに時間がかかってしまい、なかなか具体的な改善策につながりませんでした。発注システムでは仕入れ数量を自動集計できるので、廃棄量削減というメリットも大きいですね。

担当者:ほかにも、レジでは現金の自動入出金機、自動集計機を入れています。当店では3つの金庫があり、以前は、そのすべての金種を1枚ずつ数えていました。1万円札は何枚、5000円札は何枚とPCに入力していきます。間違いがあれば、今度は2人体制で数え直しです。レジ周りが自動化されたおかげで手間も入出金のミスもなくなり、お客様のセルフオーダーから現金の出入りまで、すべて仕組み化して集約できるようになったんです。

IT導入に抵抗した人も、いまでは率先して活用

― ITツールの導入に、従業員から反対の声はありましたか?

支配人:従業員の抵抗は激しかったです。古くからのスタッフには「エッ」と驚かれて拒絶反応。それは当然だと思います。長くやってきた現場の環境が変わるのは誰だって嫌ですから。それでも社長が「新しいことにチャレンジしよう」といい続けてくれて、それが徐々に浸透していったのです。若い人たちが年配の人たちにスマホの操作を教えながら談笑している、という場面が見られるようになりました。勤続30年になる60代の女性がいます。社長よりも経歴が長いのですが、そのスタッフは最初「できへん、できへん」と、端末に触ろうともしませんでした。それが、いまは誰よりも操作に習熟して、新人に教えたりしているんです。新しいことにチャレンジすることを、「これは自分を変えるチャンス」と思ってくれたのだとしたら、こんなに嬉しいことはありません。

2016年からはじまったIT化の大改革も、いま5年経って、完成に向かいつつあると思っています。「時代に合わせてやり方を変えていかないと会社は伸びていかない」という社長の言葉についていきましたが、その間、苦労とか辛いと思ったことはありませんでした。どちらかというと、みんなで楽しく乗り越えてきた印象です。私たちは苦手意識をもつ年配のスタッフをフォローし、彼女たちも一生懸命に理解しようとしてくれました。皆が同じ方向に動いていれば前に進むことができると実感しているところです。

― 業務が省力化して、どのような効果がありましたか?

支配人:機械でできることは機械に任せるようになって、時間的にも心理的にも余裕が出たことで、今日の販促方法や言葉遣いはどうしようかなど、スタッフ同士が接客に関する話をするようになりました。明らかに「おもてなし」にかけるモチベーションが上がっています。

2020年から始まったコロナ禍で、ふだんは平日3000~4000人あった来客数が減ってしまいました。1500人以下になったときにお店を閉めたのですが、休業の間も、各スタッフが講師となって得意分野を教え合う勉強会を開いたり、「コミュニケーション検定」という資格を取りにいったりして、モチベーションが落ちることはありませんでした。

店舗を改装して、お客様にも見える形でデジタル技術を活用してからも、うれしいことにお客様から否定的な意見が聞かれたことはありません。「新しくなっても味は変わらないね」とか、「去年よりよくなった」「去年よりおいしくなった」という声もいただけます。それは、私たちにとっては、もっともっと、という向上心につながります。一方で、味や地元への思いについては、変えてはいけないとも考えています。伊勢にきたら伊勢らしい味やお土産を楽しんでいただきたい。新しい技術と昔ながらの味。どちらもバランス良く実現していく、という流れに持っていきたいです。

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有限会社ゑびや

設立1994年(創業1912年)
事業内容食堂の経営、観光用お土産の製造・販売、システム開発・販売、デザイン開発・提案
代表者代表取締役 小田島 春樹
本社所在地三重県伊勢市宇治今在家町13
企業サイトhttps://www.ise-ebiya.com/
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