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〔日経ネットビジネス12月号〕ネットで挑む産業維新「農業」安心野菜は“履歴”で決まり? 2002年11月25日
〔冷食タイムス〕インフォM、受発注システム今月稼動 会員増効果の期待も 2002年11月19日(11月18日付け速報版にも同内容が掲載)
〔物流Weekly〕フーズインフォマート 5000社強の企業が参加 2002年11月18日
〔物流ニッポン〕インフォマート、物流サービス拡充、円滑な取引をサポート 2002年11月7日
〔日本食糧新聞〕インフォマート、受発注ASP事業に参入〜外食・中食のIT化促進〜 2002年11月1日


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〔日経ネットビジネス12月号〕ネットで挑む産業維新「農業」安心野菜は“履歴”で決まり? 2002年11月25日
「ネットで挑む産業維新」〜「農業」安心野菜は“履歴”で決まり?
 注目集める「トレーサビリティ」という名の“情報バケツリレー”

食への関心が高まり、今、農業の在り方が根底から見直されている。きっかけは「トレーサビリティ」だ。野菜の栽培履歴から流通経路まで、すべてをガラス張りにすることで、野菜との付き合い方が変わり始めた。
「安心神話」は崩れた。マーチャンダイジングをゼロから見直す(イトーヨーカ堂の食品事業部青果部青果担当バイヤー押久保清志氏)。
 イトーヨーカ堂が、野菜の販売体制の改革に躍起になっている。改革の要は、インターネットでの情報公開だ。
 同社は今年3月、生産者の情報や栽培方法などをWebサイトで確認できる「農ぶらんど」*(1)という野菜の販売を始めた。5月には、野菜に貼られたシールのIDをWebサイトに入力すると、生産者の情報を確認できるプライベートブランド「顔が見える野菜。」*(2)も立ち上げた。
 イトーヨーカ堂はこれまでも、売場で生産者情報を表示し、こだわりや安全性などをアピールしてきた。しかし押久保氏は、「売場だけでは公開できる情報に限りがある。食の安全への関心が高まった今、お客様に安心して野菜を食べてもらうには、ネットでさらに詳しい情報を提供することが不可欠だ」と言い切る。


●消費者の“安心”取り戻すトレーサビリティシステム

 野菜の流通が「トレーサビリティ」を合言葉に、大きく変わろうとしている。一般にトレーサビリティとは、商品の生産工程と流通経路をさかのぼって調べられることを意味する。BSE問題*(3)で「食の安全」に対する関心が高まり、食品が安全に生産され、流通しているかを消費者が直接確認できる仕組み、いわゆる「トレーサビリティシステム」に注目が集まった。
 トレーサビリティシステムでは、複数の流通拠点から情報を吸い上げ、野菜一つ一つの情報を消費者がいつでも確認できるようにする必要がある。それには、インターネットは格好のツールというわけだ。イトーヨーカ堂のWebサイトでの情報公開も、こうした流れに沿った戦略といえる。
 今年2月、農林水産省が中国産のオオバなど6種類の野菜から基準値を上回る残留農薬が検出されたと発表。それ以降、野菜においてトレーサビリティシステムを確立しようという機運が高まっている。(表1)東急ストアの青果部野菜課長の神木良和氏は、「消費者に安心を提供するには、トレーサビリティは不可欠。積極的に導入を進めるべきだ」と語る。
 東急ストアは昨年10月から、生産者情報や野菜の出荷時刻、流通経路などを店頭の専用端末で公開している。情報公開に協力する生産者の一人は、「消費者の安心への関心は、今後さらに高まりそうだ。情報公開に取り組まないと、流れに取り残される」と危機感を募らせる。井出氏は東急ストアとの取り組みとは別に、約50ヶ所のセンサーで管理しているハウスの温度や湿度、日射量、2台のカメラで撮影している育成状況などを、Webサイトで公開する計画も進めている。


●農協も安心野菜に躍起 異業種からユニクロが参入

 小売りや生産者だけではない。両者をつなぐ流通業者も、トレーサビリティシステムの導入を進めている。
 日本一のネギの産地として有名な埼玉県深谷市のふかや農協*(4)は11月中旬から、同農協が出荷した減農薬減肥栽培のネギについて、残留農薬の検査結果をWebサイトで公開している。ネギに貼られたシールのID番号をWebサイトで入力すると、使用した農薬の種類や時期、回数、残留農薬の分析結果を確認できる。「当初は、情報公開で付加価値をつけ、中国産のネギに対抗するのが狙いだった。しかし、今や安心・安全を保証する情報を公開するのは産地の義務と考えている」(ふかや農協の担当者)。
 農協の全国組織である全国農業協同組合連合会(JA全農)*(5)も、BSE対策で構築したトレーサビリティシステム「全農安心システム」*(6)を野菜に適用。米やお茶など一部の商品についてWebサイトで産地の情報を提供している。
 一方、異業種から“安心野菜”に新規参入した企業もある。カジュアル衣料「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングだ。同社は子会社のエフアール・フーズ(東京都渋谷区)を通じて10月から、農薬を少なくした野菜を「SKIP」*(7)というブランドでネット販売を開始した。使用した農薬の種類や散布の時期、回数などもWebサイトで公開している。同社の柚木治社長は、「お客が求めているのは、すべての情報が見えること」と言い切る。


●野菜特有の複雑な流通構造 トレーサビリティ導入にカベ

 とはいえ、トレーサビリティシステム構築の動きは、まだ限定的な取り組みに留まっている。理由として、野菜の安全性に対する機運が高まってから、あまり時間がたっていないこともある。しかし、トレーサビリティシステムを本格的に導入するには、野菜の流通を根本から見直す必要がある」と指摘する声も多い。
 現在、野菜の流通の7〜8割は市場で取引されている。その大部分は、農協からJA経済連やJA全農県本部、JA全農という“農協系統”*(8)を通じて市場へ出荷されている。生産者が作った野菜は一度農協の集荷場に集められ、大きさや味の等級など規格ごとに選別される。そして、膿瘍は「○○産」として箱に梱包し、市場へ出荷する。市場では卸が仲卸にセリや相対取引で販売し、最後に仲卸が小売へ販売する。
 こうした複雑な流通構造では、消費者の手に渡った一つひとつの野菜の流通経路をさかのぼることは容易ではない。このため、川下の小売りが生産者と直接野菜をやり取りする市場外取引から、トレーサビリティシステムの導入が始まっているのが現実だ。そのため、流通量はどうしても少なくならざるを得ない。


●非接触ICカードを使い、市場流通も完全追跡

 こうした状況に目を付け、市場流通に対応したトレーサビリティシステムの推進に乗り出したのが、制御機器メーカー山武だ。同社は、非接触ICカード*(9)を情報伝達の媒体に使い、インターネットで複数の流通拠点を結んで情報を収集・公開する「お野菜どこからナビ」を開発した。同社は「技術的には市場流通でもトレーサビリティは確立できる。」と断言する。
 仕組みはこうだ。まず、生産者がパソコンを使って非接触ICカードに生産者と野菜の情報、出荷時刻と共にカードの情報を集荷場のパソコンに読み込ませる。今度は集荷場の担当者が、別のICカードに生産者から引き継いだ情報と出荷時刻を書き込み、市場に出荷する。このプロセスを各事業者間で繰り返し、小売まで情報をリレーする。
 山武はお野菜どこからナビを普及させるため、昨年5月に東急ストアや生産者を組織する企業間取引サイト運営会社の栽培ねっとと、「青果物EDI協議会」*(10)を設立。現在、協議会には卸も含め33社が参加している。来年1月にも、実際に市場流通にお野菜どこからナビを適用し、具体的な運用方法を検証する。協議会に参加する横浜市中央卸売市場の卸、横浜丸中青果は「実現すれば“安心”というブランドで市場の価値を高めることができる」と期待をかける。
 例えば、あるトマトから違法農薬が検出されると、今までは生産者や流通経路を特定できないために、その産地のトマトをすべて市場から排除していた。しかし、生産者や流通業者を特定できれば、問題のトマトだけを迅速に撤去できる。他の生産者や流通業者も巻き添えにならずにすむ。


●頭の痛いコスト問題 結局は消費者負担に

 ただし、技術的には実現可能でも、システムの運用コストを誰が負担するのかという、頭の痛い問題もある。「国が個体番号の表示などを義務付けた牛肉と異なり、野菜のトレーサビリティは、事業者が自発的に取り組む任意のシステム(農林水産省食料局)との位置付けだからだ。
 農林水産省は、事業者が過剰な投資をしなくてすむように、トレーサビリティシステムで管理する情報の項目などを示したガイドラインを今年度中に作成する。しかし、大田市場の卸、東京青果は「費用対効果が見えにくいシステムへの投資は厳しい」と打ち明ける。
 そのため最終的には、コストは消費者が負担することになりそうだ。実際、イトーヨーカ堂は「顔が見える野菜。」を、システム運用コストを負担するため通常の野菜よりも10%程度高い価格で販売している。
 イトーヨーカ堂が今年10月に実施した「顔が見える野菜。」の購入者を対象にした聞き取り調査では、生産者の情報が表示されていたことを購入の理由に挙げた人が4割を超え、毎回買うと回答した人が4割、2回に1回は買うとした人が2割いた。同社は「一定の顧客層は、安心を得るためのコストを負担してくれる」とみる。


●情報公開の内容に迷いも “リスクテイク”の覚悟必要

 トレーサビリティを取り巻く環境は着々と整いつつある。だが、イトーヨーカ堂は「情報公開による“リスク”を考えると、どこまで公開すべきか判断が非常に難しい」と打ち明ける。公開する情報の中身について、どこまで踏み込んでリスクを取るべきか。実はここに、トレーサビリティシステムが抱える最も根深い問題が潜んでいる。
 イトーヨーカ堂は「顔が見える野菜。」で当初、使用した農薬の種類なども公開した。しかし、「バイヤーでも、すべての農薬について安全かどうか完璧に判断できない。足元をすくわれかねない情報を無防備に一般公開すべきではない」(押久保氏)と、現在は公開を見合わせている。
 トレーサビリティシステムで“安心”をウリにする以上、故意に不正を働かなくても“安全”でない商品を取り扱った場合は当然、その事業者は責任を問われることになる。「顔が見える野菜。」のように、プライベートブランドとして販売するとなると、その責任はさらに重い。プライベートブランドは小売りが独自に開発した商品であり、安全性についても全面的に責任を持つことになるからだ。
 そのため、トレーサビリティシステムで情報を公開するには、厳格な品質管理基準や安全基準を小売りや流通、生産者が持ち、検査も実施して、安全が保証された野菜のみを取り扱うことが前提となる。トレーサビリティシステムは、情報を公開、追跡するためのもので、野菜の安全そのものを保証するものではないのだ。
 実際、イトーヨーカ堂はトレーサビリティシステムの導入と並行して、野菜の取扱基準書を今年10月に策定した。「今までは農協が提供する情報をそのまま信用していたが、これからは自社で確認しないとダメだ」と、同社の押久保氏は言う。情報公開を進めるには、生産者が提供してくる情報を自ら吟味し、安全性を保証していく姿勢が不可欠だ。農水省も2003年度中に、情報管理やインターネットなどによる情報公開が適切に行われているかを認定する「トレーサビリティJAS(仮)」制度を創設し、こうした取り組みを後押しする。


●何を出すか、出さないか勝負はマーケティング戦略

 しかし、現実には完全な情報公開は難しいだろう。最終的に「何を出すか、出さないか」は、各社のマーケティング戦略にかかってくるからだ。
 例えばエフアール・フーズは、契約農家の氏名や産地リスト、使用した農薬などの栽培履歴は公開している。しかし、同じトマトでも「このトマトは○○さんが作った」というように、生産者まで特定することはできない。
 この“ユニクロ野菜”の場合、同社の「衣料で培ったSPA*(10)の手法を野菜に適用し、高品質で低価格の野菜を提供する」(柚木社長)という戦略を柱としている。産地はあくまでも同社の品質管理基準に従って野菜を製造する“工場”と認識し、生産者の顔や産地よりも「SKIP」というブランドを前面に打ち出そうという狙いだ。そこには、自然相手の農業であっても、あたかもマスプロ製品のように厳格なスペックで管理し、供給していく“ユニクロ商法”の原型が見て取れる。
 一方、東急ストアなど従来の小売は、個々の商品の生産者や産地の情報を付加価値として重視する傾向にある。特に東急ストアでは2003年中にも、Webサイトや電子メールを使って産地の生産者と直接コミュニケーションを取れるシステムを導入することを検討している。同社の神木氏は、「産地の特設コーナーを作り顧客にICカードを配って、産地が顧客を囲い込めるようにしたい」と言う。
 まずは、長野県朝日村と協力し、システムを構築する予定だ。産地をブランドと位置付け、“顔が見える”ことで都市の消費者の心情に訴え、固定客を育てる戦略だ。


●意識のギャップは埋まるか 普及のカギは消費者が握る

 トレーサビリティシステムが普及すれば、インターネットによる情報開示を契機に、分断されていた生産者と消費者をダイレクトに繋ぐことになる。それは、生産者や流通、小売りにこれまでの野菜流通の在り方を見直すきっかけを与えるだけではない。消費者に対しても、農業の現実を正しく理解することを要求する。
 イトーヨーカ堂の「農ぶらんど」にミニトマトを提供している愛知県渥美郡の生産者、河合洋氏は、「おいしい野菜を作るには、農薬は必要。しかし、そのことを正しく理解している消費者はほとんどいないだろう。情報公開は構わないが、農薬と聞くだけで拒絶反応を起こす人も多いのではないか」と漏らす。公開された情報を正しく判断できなければ、“風評被害”も起こされかねない。
 消費者側も安全性をタテに、情報公開を求めるだけではだめだろう。トレーサビリティシステムは、消費者の野菜に対する正しい知識と理解があって、初めて成立する。

*(1) 農ぶらんど:食材の企業間取引サイト「フーズインフォマート」を運営するインフォマート(東京都港区)が開発した、野菜のブランド。
*(2) 顔が見える野菜。:花きや青果物の企業間取引サイトを運営するワイズシステムが、イトーヨーカ堂と共同開発したプライベートブランド。
*(3) いわゆる狂牛病問題のこと。感染ルートの解明が求められた結果、トレーサビリティシステムの必要性が叫ばれるようになった。
*(4) ふかや農協:日本一のネギの産地、埼玉県深谷市の農協。11月中旬から残留農薬の検査結果をWebサイトで公開している。
*(5) JA全農:全国農業協同組合連合会。農協の全国レベルの組織で、野菜の販売など経済事業を行なう。
*(6) 全農安心システム:全農が開発したトレーサビリティシステム。トレーサビリティを実現するための情報管理方法などの基準を定めている。
*(7) SKIP:いわゆる“ユニクロ野菜”の正式ブランド名。ファーストリテイリングの子会社、エフアール・フーズが販売する。
*(8) 農協系統:農協(JA)、JA経済連、JA全農県本部、JA全農というJAグループを使った出荷ルートのこと。農協は市町村レベル、JA経済連やJA全農県本部は都道府県レベル、JA全農は全国レベルで、農協の組合員が生産した農畜産物を販売する事業を行う。JA全農県本部は、農協改革の中でJA全農と経済連が統合し、JA経済連に代わって都道府県レベルの販売事業を担う。
*(9) 非接触ICカード:データの読み書き機と無線で通信する機能を持ったICカードのこと。非接触ICカードの事例としては、JR東日本の「SUIKA」が有名。
*(10) SPA:自社で製造から販売までを一括管理する製造小売業。在庫を抱えるリスクは大きいが、中間コストを抑え、高い利益を確保できる。


【変われるのか?生産者の依存体質】

 トレーサビリティシステムの普及は、情報公開に賛同する生産者の協力がカギとなる。しかし、「意識の高い生産者はまだ一部で、小売間で既に囲い込み競争が激しくなっている」(イトーヨーカドーの押久保氏)という。
 現状では、生産者がトレーサビリティシステムに参加するには、小売りと直接取引きをし、小売りの厳しい品質基準や価格の要求にも応える覚悟が必要だ。生産者自らがコスト意識を磨き、ビジネスとして農業に取り組む姿勢も不可欠となる。しかし、これらの条件を満たす生産者は、そう多くない。生産者の意識改革が、トレーサビリティシステムの導入機運に追い付いていないのだ。
 愛知県渥美郡の生産者、河合氏は「多くの農家は、農協に出荷すれば10日後にはお金が入るという依存体質から抜け出せないでいる。このままでは、トレーサビリティの現実どころか、中国野菜に日本の農業は負けてしまう」と、現在の生産者の意識に疑問を投げかける。河合氏は15年間続けてきた農協への出荷を止め、今年8月に仲間6人と有限会社ジャパン・アグリ・ベンチャー・ユニット(JAVU)を設立している。
 一方、本来生産者を応援する立場にある農協も問題を抱える。井出農園の井出氏は「直接取引きを始めると、農協から圧力がかかる」と打ち明ける。農協自身も全農に出荷せずに小売と直接取引すると、全農からの風当たりが強くなる。
 全国農業協同組合中央会(JA全中)のJA改革推進会議では、「連合会は農協が直接販売しようとするとつぶしにかかる。時代は変わってきており、消費者やスーパーの要望をきかないとダメだ。」との発言が噴出しているという。

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