食品業界の情報ネットワークが、たかだか6年前にはこの程度だったのか、と思わされる文章だ。これは酒類に限った表現だが、食品流通全体でも状況は似たようなものだったのだろう。ところが、6年前の現在、食品食材企業間取引サイト「FOODS Info Mart」には、売り手企業が1700社、買い手企業が1900社も集い、活発な取引が行われている。会員の伸びは著しく、2001年度中には1万社が見込まれているという盛況ぶりである。この6年に間に、食品流通業界にはたいへんな改革が起こったことになるが、それはいったい何だったのだろうか。
それを解明することは、まさしく「FOODS Info Mart」が何を目指しているかを説明することになる。「FOODS Info Mart」設立されたのは1998年のこと。それまで食品流通とは縁もゆかりもない人々が、わが国初の食品食材企業間取引サイトを開設したのはなぜだったのだろう。「もともとの発想は、デパートの催事場にあるんです。特定のメーカーや地域を限定した食品ではなく、誰でも納得するような食品を選りすぐったパッケージを作って、デパートのスペースを借りて営業する形態です」自ら食品業界では、門外漢、という同社取締役社長・村上勝照さんは、意外なことから語り始めた。どうやらeビジネスは念頭になかったらしいのだ。
その秘密を少しだけのぞいてみよう。1つは、既存の卸業が手を出しにくい商品を幅広く集めていること。卸の立場からすると、大量ロットの商品を取り扱わなければメリットがない。しかし、大量生産はできないが、食品として優れているものもたくさんある。そこをていねいにフォローしていく。次がネットの特性を活かして地域性を超えてしまったこと。売りたい人と買いたい人を、ピンポイントでタイミングよく結びつければ、現在の物流事情はその取引を可能にする力を持っている。そして最大のポイントは、「信用」だろう。「FOODS Info Mart」の株主には、大手商社が顔をそろえている。加えて、社団法人日本フードサービス協会や食品関係のメディアともコンテンツで提携し、情報の信用性を高めている。また、売り手側から見れば、買い手の支払い能力が気になるところだ。この点でも、入会時の信用調査や、一定の条件のもとではあるが、決済代行システムでの確実な代金回収が保証されている。